解題
最後までお読みくださりありがとうございました。
ホラー作品であり、しかも後味が悪い作品ですので、最後に肩の力を抜く時間も必要かと思い、今回は解題を添えることとしました。通しで読んでいただけた方については、ここで深呼吸してください。
さて、はじめに明言しておきますと、本作品は『幽霊列車』というゲームをプレイした後に、自分だったらどういう幽霊列車を描くかなと考えて制作したものです。似ている設定が一部登場していますが、全然違う話なので二次創作というのでもありません。そもそも幽霊列車というモチーフ自体はありふれていますからね。
もちろん、ホラーなんてものは一から十まで解説すると興ざめですので、ここではテーマについてだけ話そうと思います。この物語では「忘却」が最大のテーマになっています。実は自分の妻についてもあまり記憶していないダメな夫である主人公や、鉄道事故について誰も記憶していないという設定もさることながら、当の神隠し事件さえも、たった1日を除いて誰もが忘却しています。
この背景には、僕の評価基準として「存在を感知されない怪異」が最強という考え方があるからです。最終幕で女子がキャッキャとホラートークを交わすとき、「腕の痣」という感知しうる恐怖には反応しますが、「幽霊列車」という感知できない恐怖には何も反応しません。
実際には「腕の痣」そのものは何ら恐ろしい現象ではありません。その痣をつけたのは「僕」ですし、生きた人間です。しかしそれを恐怖に書き換えてしまう「忘却」が存在していて、つまり「僕」という人間の存在そのものを呑み込んでしまった「幽霊列車」こそが本当に恐怖すべき相手なのに、恐怖できないという構造になっています。
僕たちが稀に目にする不可解な心霊現象も、実は大いなる力を持った強力な怪異の手によってもたらされた「忘却」が、その根底に横たわっているのかもしれません。
最後に、この物語を紐解くために考えるべきポイントをお教えして解題を結ぼうと思います。
最大のポイントは、主人公はいつから幽霊列車に乗っていたのかという点です。作中でも何度か自問していますが、様々な観点から解釈してみると、本作をより深く楽しめるかと思います。
最後になりますが、改めまして、お読みくださりありがとうございました。恐怖のある楽しい生活をお過ごしください。
幽霊列車 早瀬 コウ @Kou_Hayase
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