沙羅双樹(夏椿)が咲き誇るといい
- ★★★ Excellent!!!
狂信の母親に排斥された、少女と呼んでもいいような若い未婚の母が、まるで煉獄を辿るかのような苦難の物語。
#こう書くと母被りしてますが、狂信のほうは祖母という話です
色々な読み方ができるように思う。
新興宗教の問題に関心がある方には、生々しい実情を精緻に描き出した架空のルポルタージュとして。
あるいは、圧倒的存在感のダーク・ヒロイン(?)久美子の狂気を観察する一種のホラーとして。
個人的感想としては、より良く、正しく生きることが如何に難しいか、ということだった。
愛しい人とのかけがえのない絆を、理知と勇気で選び取るべき未来を、目もくらむような怒りや怨嗟は簡単に狂わせる。
カルト、悪質な新興宗教はそういう誰にでもある闇や隙につけこんで妄執を植え付けるのだ。
それだけに、ヒロイン沙羅の、拭い去れないカルトの呪縛に立ち向かい、あるいは受け流し、過去とか父親とかどうあれこの子のためにより良い未来を作るのだ!
その姿がいかに貴いか。
最後に登場する一人(叶夢《かのん》ちゃん♥)を除いて誰もが業や悩みを抱え、当然に面白おかしいお話ではないのですが、
登場人物のセリフに、作者様独特の一種ユーモラスな雰囲気があって、楽しめるストーリーです。