物語をきっかけに描かれる、少年と少女の鮮やかな距離感。

喉越しの心地よい、落ち着いた文体で描かれた純文学です。
純文学と言っても高尚な内容で読み手を煙に巻くようなことはせず、リュータとノバナ、二人の高校生の心の距離を《小説》、そして《執筆》を通して描いた青春小説でもあります。

”書く事”を書いた小説ゆえに複数の《作中作》が登場しますが、どれも秀作ぞろいです。
しかも、ただ秀作と言うだけでなく、リュータの作品なら彼の筆致で描き、ノバナの作品ならノバナの筆致で描かれています。
そして書く事に向かい合い刻々と成長する二人の若者の変化までもが、それぞれの作品に影響を与えている。
《作中作》として扱うにはもったいない、けれども《作中作》にしたからこそ長編小説としての魅力が光る、見事な作品たちでした。

最終話に向かうにつれ近づいて行く二人の絶妙な距離感、初々しさがが、思わず読み手の頬を緩ませるくらい丁寧に描かれています。

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