みずからの想いで神のそばに残ったわたしの欠片に、やっと逢えたんだね……

 この物語の主人公、高校生の雫は、幼いころから自分には何かが欠けていると感じていた。

 新しい生活が始まったばかりで、友人も少なく、ひとりで、この公園を散策することが、今の日常になっていた。
 その日、初めて、スイレンの花が咲く池に辿りつき、その景色に見とれていた。しかし、目の前の池に落ちそうになり、その時、スイレンが茂る隙間に、鏡のようなものを見つける。

 その鏡の中に、自分の姿を認めたところから、不思議な体験をすることになる。

 それは、遙か昔……。
 人々が苦境に耐えかね、ひとりの少女を『贄』として神に捧げようとした、古い記憶が主人公の脳裏に流れ込んできたのだ。
 苦渋の決断をせざるを得ない人々。その決断を良しとしていない神さま。そして、『贄』としてその身を寄せようとする少女。そこにいるすべてが優しい……。

 この記憶を得た主人公は、どうなるのか。欠けた何かを取り戻せるのか。
 そこには素敵な結末が待っています。