“波長があった”と気づいてしまう

小説は、はじめぼんやりしたものが、だんだんと像を結ぶ表現手法だ。
論文と違い、結論は曖昧なまま、次第に明確な結末へと向かう読み物。
それは、ラジオの周波数を合わせていくような行為に近いだろう。
本作は、小説の特徴をまさしく利用した作品だ。
読んでいくうち、だんだんと。
曖昧だったものの輪郭がはっきりし、
その微細な箇所までもが見えてきて……
気付いたら、もう手遅れになっている。

私たちは「読み終える」ことで現実に帰ることができる。
しかし本作は、微細なところまで見せてしまうがために、前と同じ現実へとは返してくれない魅力をもつ。
是非一度読んでほしい。
きっと波長があうはずだから。

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波長があう