生煮えの野菜のような、ごろごろして呑み込めないわだかまり

それでも、少しだけ前を向ける結末がとても素晴らしかった。
主人公のぎこちない家庭や、かつて仲が良かった妹との決裂は、端から見ると他愛のないもの。けれど、そこから逃げ出せないほど幼く、小さな世界しか持たない子供たちにはあまりに切実なことだった。
あくまで家族の体裁を保ちながら、心暖まるよりも、居心地が悪いばかりの家族というものは、おそらく世間にあふれている。その実在感を細やかに描き出す筆致は見事の一言。

思い出の中、幼い自分達が求めた甘美は二度と手に入らない。タルトを前にしたこのくだりが、私には特に悲しく、切なく思えました。
小さな世界から羽ばたく力だったノートとシャーペン、今はパソコンに変わったその翼で、彼女がもっともっと自由になれますように。