第10話 配列 その1

 魔王を倒そう!


 僕はこの世界でそう誓った。

 この世界が4,294,967,296年で終わるなんて関係ない。

 

 僕はこの異世界から戻れないかもしれない。

 だから、魔王を倒して平和な世界で終わる方が幸せじゃないか。


「僕、頑張ります!」

「ありがとう」


 ソラリスが僕の手を取って喜んでくれた。


「で、相談なんですが」

「はい」

「魔王に勝つ方法、何かありますか?」


 僕は名案が無いかソラリスに訊いた。


「魔王の防御力を下げれば良いかと」

「なるほど」


 防御力が下がって攻撃力の方が高くなれば、ダメージを与えることが出来る。


「防御力を下げる方法はありますか?」

「あります」

「どんな方法ですか?」

「魔法を使うのです」


 ソラリスは魔法を使える。

 ソラリスと僕は一緒に魔王討伐の旅に出ることになった。


 ギルド『内田屋』に行き、ギルドマスターにそのことを告げた。


「すごいな。だけど、魔王討伐は勝手にやっちゃいけないんだぜ。王様から指名された者でなきゃダメなんだ」

「そうなんですか……」

「弱い奴が挑戦しても死ぬだけだからな。命を粗末にしちゃだめだぜ」


 落ち込む僕に、ギルドマスターがこう言って慰めてくれた。


「このギルドで実績を積むこったな。そしたら王様が指名してくれるぜ」


 僕はギルドで小さな仕事からこなすことにした。

 金がたまる。

 それで、武器を買う。

 攻撃力が2しかない段ボールで作られた棒。

 これを32個買った。

 この段ボール棒を32回掛け算することにより、オリハルコンもどきの剣が出来た。

 防具については、防御力が2しかない段ボールの鎧を32個買って、32回掛け算した。


 二か月後。


  Lv.30

  スキル :プログラミング(レベル20)

  攻撃力 :4,294,967,296(オリハルコンもどきの剣を装備)

  防御力 : 4,294,967,296(この世で一番固い素材で出来た鎧を装備)

  HP : 505

  MP : 401

  素早さ :714

  知力 : 452

  運 : 348


「だいぶ、強くなりましたね」


 ソラリスが褒めてくれる。


「お陰様で」


 攻撃力と防御力だけはカンストした。

 後は他のステータスをどう上げるかが課題だ。

 例えばHP。

 これじゃ低すぎて、魔王と勝負にならない。


 ギルドでの僕の名声もだいぶ高くなった。

 『内田屋』はギルドランキングで100位以内に入った。


「あっ、そうだ。『配列』が出来る様になりました」


 プログラミングでは、配列を使ってデータ処理することが多い。

 一度にたくさんのデータを格納して、頭から順番に取り出したり、お尻から取り出したりも出来る。

 ただ、異世界でこの『配列』をどう役に立てようかなあ。


つづく

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