第14話 if 〜 else文 その1
結局、ギルドで人が雇えなかった。
もう今日はソラリスの家で、ご飯にすることにした。
「おーい。ソラリスさん。鍋が煮立ってるよ」
まったく、何ておっちょこちょいな人だ。
シチューを火にかけたまま、外出してるよ。
僕は鍋のふたを開けて、木べらでシチューを掻き混ぜた。
「ただいま。帰りました」
「おかえり。……って、火を着けたまま家を出たらだめですよ」
「すいません」
「ん? その両手に抱えているのは?」
彼女の両手には子犬が抱かれていた。
「くぅーん」
鼻を鳴らし、ソラリスの手の平の匂いをかいでいる。
柴犬っぽい。
「この犬は?」
「今日のおかずです」
「え?」
ソラリスはシチューの鍋に向かって歩いて行く。
「ちょっ、ちょっと待って!」
僕は必死になってソラリスの華奢な肩をつかんだ。
「冗談ですよぉ。こんなかわいいワンちゃんを食べるなんて」
ソラリスは悪戯っぽい笑顔だった。
だけど、犬は怯えた表情だった。
「ジョン!」
名前を呼んだ。
犬が僕に駆け寄ってくる。
「この子を仲間にしたいと思って拾ってきました」
「仲間?」
「一緒に魔王と戦う仲間です」
「う~ん」
このモフモフした生物が戦力になるだろうか?
だけど、犬だけに狩猟本能はあるだろうし、成長すればこの爪や牙だって武器になるだろう。
ちなみに、ジョンのステータスはこうだ。
Lv.1
スキル :なし
攻撃力 : 4
防御力 : 8
HP : 20
MP : 0
素早さ :30
知力 : 10
運 : 25
「おい、ジョン。あそこにいるスライム倒してこい」
ジョンは僕の言うことをよく聞く。
緑色のスライムに向かって突進して行った。
スライムと柴犬がもみくちゃになって戦っている。
まるで、でっかいグミキャンデーに噛みついてるみたいだ。
スライムも負けじと、ジョンに絡みつく。
「グワッゥウウウウ!」
ジョンが苦戦している。
仕方ない、モンスターとの実戦はこれが初めてなのだから。
それにしても、健気に頑張るなあ。
……って、悠長なこと言ってられない事態になって来た。
ジョンの身体が傷だらけで血まみれになっている。
「ジョーン!」
僕は助けに入った。
僕の圧倒的な攻撃力の前にスライムは真っ二つになった。
「無理すんなよ」
「クゥーン」
僕は瀕死の状態のジョンをソラリスの家に持って帰った。
「
ソラリスの治癒魔法でジョンは復活した。
「こいつは僕に忠実だから、死ぬまで戦う気だったんです」
「あら、まあ」
「無理するなって言っても犬だから、分かるかなあ」
僕はジョンに無理して欲しくなかった。
「あ!」
僕はもう一度、ジョンとスライムを戦わせた。
ジョンはある程度傷を受けると僕の元に戻って来た。
「よし。今日は無理しなかったな」
「ワン!」
僕はさっき、ジョンにこうプログラミングした。
if (HP < 10){
逃げる
}else{
戦う
}
つづく
異世界で学ぶプログラミング! うんこ @yonechanish
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