異世界で学ぶプログラミング!

うんこ

第1話 異世界でのスキルは『プログラミング』

 僕は、都内で働くプログラマ。

 28歳、独身、彼女無し。

 割と普通の容姿だと思ってます。

 今日も納期前のデスマーチの最中、エナジードリンク片手にガシガシとプログラミングしていた。

 得意言語はC、C++、VBA。


「やべ、これ本番データでテストしないと意味ないや」


 僕の作った画面は大量のデータを表示する。

 だから、大量のデータが必要だった。

 それもバリエーション豊かなデータが。

 それを一から手で作る暇はない。

 今、作っているシステムは現行システムのリニューアルだから本番データをアレンジすればテストで使えると思ったんだ。


「テストするために本番データ取ってきていいっすか?」


 僕は上司に確認を取った。


「いいけど、一人でやるなよ」

「はい」


 プロジェクトマネージャーである僕の上司、権田。

 髭面でアフロ。

 群青色のワイシャツに黄色のネクタイにチノパン。

 なんつーカッコだ。

 ちなみに、本番システムはお客さんが使ってる。

 だから壊すなんてもってのほか。

 本番システムに何らかの作業をする時は二人体制で慎重に行う。


「田中、俺と一緒にやろう」

「お願いします」


 声を掛けてくれたイケメンの村田先輩が声を掛けてくれた。

 ちなみに僕の名前は『田中あきら』。

 二人してサーバルームに向かう。


「さあ、やろうぜ」

「はい」


 僕は緊張していた。

 本番システムに触れるのは久しぶりだからね。

 端末から、本番システムに接続した。

 サーバルームにあるこの端末だけが本番システムに接続出来るんだ。


「じゃ、いっきまーす!」


 僕は本番データを取得するプログラムを、躊躇なく実行した。

 今思えば、僕はそのプログラムの中身を確認しておくべきだったなあ。


「あれ? データが取れてない?」


 いつものフォルダにデータファイルが出来てない。

 僕の背中に冷たいものが走った。


ブルルル。


 僕のスマホが鳴った。

 上司の権田からだ。


「おい! お前、何やらかしたんだ! お客さんのデータ全部消えてるぞ!」

「え?」

「大損害だぞ、お前! 会社潰す気か!」


 そこにいろ!


 権田からの電話が切れた。

 僕はどうしていいか分からなかった。

 大手通販サイトの本番データを消してしまった。

 今頃、買い物出来ない人が通販サイトの会社にクレームの電話をしていることだろう。

 その責任をうちの会社が取れるんだろうか?

 いや、僕が取らされる?


「村田先輩!」


 僕は一緒に作業していた村田先輩を呼んだ。

 彼はいち早くここから退散していた。


 ああ!


 逃げ出したい!


 どこか遠くへ!


 僕はそう願った。

 意識が遠くなっていく。


 そして、目が覚めるた。

 

 僕は赤い絨毯の上に倒れていた。


「まあ! 初めて人間が出て来た!」


 黒髪の綺麗な女性がそこにいた。

 シルクの白装束が目に眩しい。


「私は聖女ソラリス。別世界から生物を召喚するのが趣味です」

「悪趣味だなあ」

「はい」

「認めるんだ」


 彼女がこれまで召喚出来たのは、

 犬、猫、消しゴム、ダンゴムシ、蟻、ファミコンカセット……

 人間は僕が初めてらしい。

 

「初めて人間を召喚出来たわ!」


 喜ぶなよ。

 まあ、僕はトラブルから一時的に逃げられたからいいけど。

 一時的に、ならいいけど……


「あなたのスキルはこんな感じです」


 何もない空中に文字が浮かぶ。


  Lv.3

  スキル :プログラミング(レベル1)

  攻撃力 : 4

  防御力 : 8

  HP : 10

  MP : 30

  素早さ :5

  知力 : 50

  運 : 5


「ゲームみたいですね」

「異世界ですから」

「ふむ」


 この異世界において、僕には『プログラミング』というスキルが備わっているらしい。


つづく

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