第7話 この世界は32bitで出来ている

 僕は、ちょっと強くなった鉄の剣でゴブリンに立ち向かった。


「たあああ!」


 ゴブリンもなかなか強い。

 ソラリスの魔法の援護を受けながら、何とか倒したといった感じだ。

 東の村『コンヤガヤマダ』の畑を毎晩荒らしに来ていたゴブリンとは、これでもうおさらばだ。


「ありがとうございます!」


 村長からお礼にと、野菜を貰う。


「今日はカレーにしましょう!」


 ソラリスが嬉しそうに籠に入った野菜を受け取る。


 ギルド『内田屋』に戻り、仕事が完了したことを報告する。


「やるじゃねえか! またよろしく頼むぜ!」


 ギルドマスターが報酬をくれた。

 1万エンだ。


「よし! これで沢山武器を買って、最強の武器を作るぞ」


 僕はこの戦いで『プログラミング』スキルのレベルが5になった。

 めでたく、掛け算が出来るようになった。


「攻撃力、99999999999999999999999999999999999999999999999999999999……

そんな武器を作りたいんだ!」


 僕はソラリスに向かって宣言した。

 そんな武器が手に入れば、この世界で僕は最強だ!

 チート万歳!


「そんな武器は作れません」

「え? 何で?」

「この世界で最強の武器の攻撃力が4,294,967,296だからです」


 その名は『オリハルコン』。

 伝説の勇者のみが装備出来るという。


「4,294,967,296? 聞いたことある数字だな」

 

 あ!


「32bitか!」

「bit?」

「コンピュータが処理する情報の基本単位です。1bitで0と1を表現出来るんです」


 2bitは2の2乗で4。

 3bitは2の3乗で8。

 そして、この世界は32bitで出来ている。

 だから、2の32乗 = 4,294,967,296。

 つまり4GByteだ。

 今時のUSBだって1TByteはあるぞ。


「この世界の限界が32bitとは。せめて64bitにして欲しかったな。今時、32bitって……」


 頭を抱えている僕を、ソラリスが不思議そうな顔して見ている。


つづく

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