第9話 世界の終わりと納期

 僕はソラリスを問い詰めた。


「そんなぁ……初めっから僕を召喚するつもり無かったでしょ? たまたま僕だっただけでしょ?」

「はい」

「簡単に認めないでくださいよ」

「でも、あきら様がこの世界に来てくれて良かったと思ってます」

「え……?」


 美人のソラリスにそう言われると、ちょっと照れるなあ。

 その後は、ソラリスから魔王の悪行を聞かされた。


「悪い奴ですね」

「でしょ」


 この世界を我が物にしようと闇の中からやって来た魔王は、『納期ノウキ』という世界の終わりを定義した。


「私達この世界の住民は、魔王が定義した『納期ノウキ』までに、魔王を倒さなければならないのです」

「もし、『納期ノウキ』までに魔王を倒せなければどうなるのでしょうか?」

「私たちは滅び……そして、この世は闇に包まれ、魔王の物になってしまうのです」


 なんて恐ろしいんだ。

 現世界での僕は仕事で『納期ノウキ』に追われていた。

 そして、この異世界でも『納期ノウキ』に追われるとは。


「『納期ノウキ』はいつですか?」

「丁度、今から三ヶ月後……」

「みじかっ!」


 納期三ヶ月後のプロジェクト何て聞いたことない。(僕の知る限り)

 魔王は、ちゃんと作業工数を見積もったのだろうか?

 ……って、ここは異世界だからそんな話は通じないか。


「でも、今の感じだとカンスト魔王に勝つ術はない感じですが……」


 魔王のステータスは32bitの世界において、限界まで達している。

 僕の『プログラミング』スキルで、同じ様に32bitの限界までステータスを上げても、魔王を倒せないのではないか。

 だって、ステータスが同じなら、攻撃し合ってもダメージは0だ。

 それこそ永遠に終わらない戦いになる。


 いや、この世界に永遠なんてないんだ。


 そのことを、この世界の住人やソラリスは気付いているのだろうか。

 魔王を倒しても、倒さなくても、この世界がいずれ終わるということを。


「ソラリスさん……」

「なんですか?」

「い、いや、なんでもないです」


 今、この世界は出来てから何年目、何だろう?

 僕は質問出来なかった。


つづく

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