気丈で聡明な彼女はどんな苦境にも屈しない。人狼界のシンデレラストーリー

主人公・レティリエが生まれ育った人狼の村は、外界との関わりを持たず、ほぼ狩猟で食糧を確保する生活を送るためか、強さこそが全て。
そんな村の中で、唯一人の姿から狼の姿に変わることのできないレティリエは、多くの仲間たちから蔑まれる身でした。
それでも彼女は心を腐らせることなく、申し訳なさを感じながらも、自分にできることを精一杯努めながら生活を送っていました。
村で一番の強さを持つ幼馴染・グレイルに、秘めたる恋心を抱きながら……
村では、強い子を成して種を存続させていくために、強者同士が結ばれる定め。
叶いようのない恋でしたが、彼女は傍でグレイルを見つめているだけでも幸せでした。

ところがある日、集落近くに足を踏み入れた人間たちによって、彼女の運命は大きく狂わされていくことになります。
レティリエは、欲に目の眩んだ人間たちの標的になってしまうのです。彼女は、非常に美しかったゆえ。
運命に翻弄されるかと思った彼女は、しかし、屈しません。自らの手で、運命を切り拓いていきます。

お手本のように美しいストーリーライン、過不足なく丁寧に綴られる文、綻びがないほど作り込まれた設定。魅力的な部分は数多くあるのですが、何よりも心惹かれるのは主人公レティリエの在り方です。
彼女は気丈ですが、決してその気丈さは生まれ持ったものではありません。
度重なる苦難に幾度も折れそうになりながら、誇り高い恋心に支えられてどうにか歩みを進めていく彼女には、つい入れ込んでしまいます。
狼になれない彼女に、武力はありません。彼女にあるのは、その美貌と知性だけ。それらの武器を手に人間に立ち向かっていく彼女を、いつも固唾を飲んで見守っていました。
ただただ彼女に幸せがやってきて欲しいと、真剣に祈りながら追いかけていました。

多くの我慢と苦悶の末に、彼女は幸せを手に入れられるでしょうか。
レティリエの勇気と覚悟には、私達にも強さをくれること間違いなしです。
どうかその目で彼女の気高い勇姿をご覧ください。

なお、こちらには『白銀の狼Ⅱ』という続編もあります。
私もこれからなのですが、未読の方は一緒に読みに行きましょう！笑