激しい運命に翻弄され続ける美しい少年が、旅の果てにつかんだ輝かしい宝物

二度目の通読になります。
ただただ、読み始めた瞬間から圧倒されること、間違いなしです。
無駄なく洗練された文章。内容は古きフランス文学を読んでいるかのように格調高く、それでいて簡潔で読みやすく、敷居の高さは感じさせません。

ジュールという名の、ひとりの美少年が辿る数奇な人生の物語です。
あまりに大きな幸運と不運が、おとなしく心優しかったジュールを翻弄し続けます。
その度に読者の心も大きく揺さぶられます。
ジュールの愛、喜び、恐怖、絶望……感情のひとつひとつが波となって、読者をも飲み込んでしまいます。ジュールと一緒に泣いたり笑ったりしながら、読む手が止まらなくなるのです。

各エピソードの構成力も、これ以外は考えられないというほど見事です。
最後まで読み切れば、そういった作品の魅力を心ゆくまで堪能できるはずです。
大切な一冊として、ぜひ、あなたのお手元に。

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