あとがき ~リドル解説~

 本編を読んで頂き本当にありがとうございます!


 ここからはストーリーに大きな影響は与えないけれど、作中に隠れていたリドル(謎、謎かけ、一見矛盾したモヤモヤ感)を少しばかり解説していこうと思います。

 ネタバレ全開で進めていきますので、このあとがきにつきましては本編読了後に読んで頂くことをお勧めします。


 また、Web小説を活かした楽しみ方を模索して今回、実験的にリドル解説を行いますが、このあとがき(リドル解説)が無くても本編は物語として完結しています。

 興味のない方や、と感じる方(実は私はこっち派だったのです(笑))はスルーして頂いても大丈夫です。

 今作は夢で見た事をベースに作られたお話で、夢特有の不確かさをリドルによって補った設計になっております。

 ではでは、よろしくお願いいたします。





〇少年の夢と頭痛の原因


 笹倉が一時十二分に目が覚めるのは、その時間が彼の死亡時刻だからですね。

 目覚めた後に頭痛と首の筋肉の強張りに悩まされるのは縊死いしした事が原因になります。

 これはリドル、と言うよりは伏線と言ったほうが良いかもしれません。


 また、笹倉が作中で食事を取る描写はほとんどないのですが、これは彼が死んでいて、食べることに対する執着が消えている(むしろ老人の作る料理に嫌悪している)からです。

 死後ならご飯食べなくても死ぬことはないだろうし。もう死んでるから。


 彼が死んだのは老人の死後、さらに後輩の事故の後、になります。




〇吉野と笹倉の仲


 お互い好意は持っているんだろうけれど、二人の関係は煮え切らず曖昧です。

 結局、吉野は笹倉の前から去っていくし、笹倉も吉野を呼び止めるけど、はっきりした展開にはなりません。もどかしや。



>太陽は。濃い紫色に染まった空に街並みの影が浮かんでいる。



 作中終盤、笹倉の話しを理解できない吉野が、彼から離れていく際の情景描写で、太陽がではなくと書いたのは吉野が笹倉から離れていく事を示唆するためです。

 さらに、ここで【吉野からの好意】=【太陽】と定義させるためでもあり、この少し後の情景描写でさらに理論を広げていきます。

 その描写が、


>少年は何か忘れているような気持ちで二、三歩、彼女の後を追った。

>太陽の去った西の空は刻々と体温を失い、藍色に変わる空の中、ひと際輝く金星がつかまたたきを謳歌おうかしている。


 ここで描かれるとは笹倉から吉野に向けられた好意です。

 金星は代表的なところでローマ神話ではヴィーナス、そのほかの神話でもの象徴ですので、笹倉から見た吉野の象徴としては申し分ないと思います(ちょっとクサいけどね)。


 金星は宵の明星、明けの明星と呼ばれ、夕方や明け方しか観測できません。

 太陽の輝きが衰えて初めて観測できるわけですが、これを二人の関係に照らし合わせると、


【太陽】=【吉野からの好意】が消えた事で初めて笹倉は自分の好意(金星=ヴィーナス=吉野)に気づき、という事になります。


 吉野にしてみれば「押してダメなら、引いてみた。そしたら結果オーライ!」と言ったところでしょうか。


 そして笹倉が叫んだ「約束は守るから!」の約束の内容については、いろいろな解釈を当てはめられます。

 四十九日経ったら学校に行く、と約束していたのかもしれません。

 他のクラスメート達も巻き込んだ計画(学園祭とか)があったのかもしれません。

 もしかしたら不登校前に吉野が告白していて、笹倉はその答えを保留してたのかもしれません。

 この辺は答えのないリドルとして楽しんで頂ければ幸いです。



 また、この太陽と金星の関係は、この恋心の行く末も示唆しています。

 すでに死んでいる笹倉の抱く恋心は、限られた時間しか観測できない金星の輝きと同様、もろい存在なのです。





〇誰が幽霊を見れる?

・一人目 生前の笹倉良二


 老人の霊が見えていたので、当然彼には幽霊が見えます。

 ただし見えるようになったのは、老人の死後からで、生まれつき見えていたわけではありません……と思う(笑)

 ちなみに笹倉少年が廃墟の中で見つけた猫も幽霊だったりします。

 後輩君が猫を見つけられなかったのはその為です。


 また、老人は少年を見ることができ、笹倉も死後、老人や黒猫が見えたので、幽霊は幽霊を見ることができる、という設定が成り立ちます(多分!)。

 なのでこの度のリドル解説では老人は幽霊を見れる人には入れませんでした。


 ちなみに少年が線香を立てるとき、必ず二本に折るのは二人の両親の存在を示唆しています。

 それに対比するように老人は一本の線香を立てるのですが、これは少年に向けた線香を示しています。



・二人目 吉野


 笹倉のクラスメート吉野も幽霊が見えます。

 笹倉とのやり取りや、玄関先に出てきた老人の姿が見れたのはその為。

 けれど彼女の霊視能力は完璧でないので、見えていることに気づいていません。


 また、吉野以外の笹倉のクラスメート達には霊感がないので笹倉の姿が見えていません。

 その為、商店街で笹倉とすれ違ったり、笹倉が声を掛けたクラスメートたちは具体的な反応をしません。




・三人目? 電線に止まるカラス達


 野生生物スゴイ!



・四人目 ???


 そして、もう一人、もしくは数人、幽霊が見える人がいます。


「おいおい、作中にはこれ以上登場人物がいないじゃないか?」


 と言う、お声が聞こえてきそうですが、間違いなく居ます。

 ズバリそれは……スーパーの店員!


 笹倉が後輩の事故現場に行く前に寄った商店街の中にあるスーパー。

 そこで幽霊である笹倉は花と日本酒を買います。

 そうです、買い物をするにはレジを通さないといけません。

 そして老人は毎日、少年のためにご飯を作っていましたので食材を買いに行かなければいけません。

 そこで用いられていたのも、このスーパーです。

 きっと売り上げを集計するたびに、金額がマイナスになっている事でしょう。


 世の中には不思議と、妙に失敗が続く人っていますよね。

 当人は真面目で、一生懸命なのに、なぜか物事が上手く行かない。

 そう言う人って、もしかしたら……と言う想像をして、約一名を作中に登場してはいませんが、存在してはいます(ちょっと、こじ付けっぽいかな?)。





〇今作のメインリドル~『死ね』は誰が誰に言った言葉?


 少年が老人に向けた言葉なのか?

 老人が少年に向けた言葉なのか?

 お互いに向けていた言葉なのか?

 それとも……


 一応僕の中で答えは確定しているのですが、これは内緒です(笑)

 どんな答えでも正解だと思いますが、もし「こういう理由で、これが答えだ!」と言う物があれば教えて頂けると嬉しいです。勉強になりますので!




〇最後の隠しリドル~老人は自分の死を理解しているのか?


 こちらも内緒(笑)

 少年は自身の死を理解していませんが、老人の方はどうなんでしょうね?

 作中に答えを示唆する描写を潜ませていますが、見つけられたとしてもにはたどり着けないかもしれません。

 そう言った点も楽しんで頂ければ幸いです。




 矛盾点や作り込みの甘い点など多々あったかと思いますが、以上が今作のリドル解説になります。

 本編だけでなく、こんな自己満足だらけの解説まで読んでくれた方、最後までお付き合い本当にありがとうございました!

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