私もブラック企業にて心身を壊した被害者であり、その観点からレビューさせて頂きます。
月並みな評価になってしまいますが、何より文が軽快で読みやすい。
一方で考察は的確であり簡潔。
この国においてはまだまだ過労やメンタルヘルスに対する啓蒙が不足しており、こうした「読みやすく、かつ、大事な事を教えてくれる」エッセイは本当にありがたいです。
今でこそ「ブラックだ、ブラックだ」と取り沙汰もしやすくなりましたが、それでもなお、心を壊すと言う境地になってみないと気づけない誤解は沢山あります。
自分はわかっている、大丈夫、自殺なんて絶対にしない。ブラック企業と、それによる精神的ダメージは、その自信にするりとつけこんで来ます。
コミカルな文に惹かれ、最初は笑い話のつもりで読む。それでも良いのです。
その選択が、もしかしたら将来、貴方の命を救うことになるかも知れません。
ここの社長さんは、悪い人間ではない。
作者に気遣いを見せているし、お小遣いもあげている。
ただ自己愛性PD傾向があって、自己中心的で、自意識過剰で、共感性が欠如していて、加齢臭が酷くて、自分が絶対的に正しいと思っているだけなのだ。
そして、ブラック企業の真の恐ろしさはここにある。
悪人であれば、損得勘定で動くのでまだ話が通じる。
しかし、自分が神の如く正しいと思っている人間にまともな話は通じない。
ワ〇ミ、電〇、す〇家、日本〇産、実は全てこのタイプなのだ。
作者は、面白おかしく書いてはいるが、一歩間違えれば犠牲者の列に加わっていただろう。
人は仕事によってどのように壊れ、どのように死んでいくのか、その過程が詳細に描かれており、正に経験者にしか書けない貴重な記録と言える。ブラック企業体験記はあまたあるが、ここまでギリギリなものはそうはない。
労働者のみならず、ブラック企業に対処する全ての人々(NPO、弁護士、行政、医療etc)が読むべき作品であろう。
悲惨なブラック企業体験談を徹底的にエンタメ視点で語り倒す、異色の作品です!
確かな筆力に支えられた人物描写がとにかく笑えます。すごいです。こんな濃いキャラの人たちが実在するなんて、世の中捨てたもんじゃないなーと思います。まあ、この人たちは捨てたほうがいいかもしれませんが。
ただ「ひどかった」ことを書くだけでなく、その分析が秀逸で、リアルです。面白さを追求していながら、うそは書いていない(脚色はあるかもですが)。ちゃんと生きた人間が書かれていることを感じます。だから本当にうっとうしい! あーこんな人がちかくにいたら絶対ムリだ! と叫びたくなります。いや、笑いたくなるのかな。
とにかく「嫌な人間」の書き方が秀逸なので、今後こっそりと「嫌な人間」を書くときのバイブルにしようとたくらんでいます。とても笑える読み物ですが、その筆力も非常に魅力的な作品です。