真白の世界で、ふたりの闘志が点火する反骨のラストシーン

自分の後ろについていたとばかり思っていたのに、気づけば自分の一足先に行ってしまっている人。確かに、身近にそんな人がいるのはおもしろくない存在だと思います。
和風近代ファンタジーのこちらの作品の美冬と秋人はそんな関係性です。

家の使用人的立ち位置で迎え入れられた秋人ですが、美冬が欲した異能の才能に恵まれ、軍人として戦争に赴くことにもなります。
そんな秋人に嫉妬混じりの感情をぶつけてしまう美冬の言動は、どこか卑屈で八つ当たり的にも見え、その複雑な想いが伝わってきます。

ですが、その先のラストシーン。
戦いに傷つき帰還した秋人を迎え入れた彼女の台詞が、彼の闘志をも着火してみせます。
そのシーンには思わず「これはかっこいい……」とぐっとくるものがありました。


本作の美冬の性格は、かなり強硬な、気性の強い感じに描かれています。
他の企画作品を見ても、ここまで凛とした美冬を描かれた作品はあまりいない気がするほどで、
てっきり最後には反抗的だった美冬が丸くなって終わるのかな……と思いながら読み進めたのですが、このラストシーンはむしろ逆でした。
美冬が丸くなるどころか、アクセルをさらに前へ踏み込む方向に描かれるのです。
その突き抜け方、揺るがない強さに加えて、
これからふたり(秋人か美冬のどちらかひとりではなく、ふたり!)の誇りを賭けた共闘が始まって行くのだという場面としての切り取り方が、とても私のツボに刺さりました。

例えば「今まで素直になれなくてごめんなさい……」というような、『すぐそこにある大事なものに気づきました』的ラストも、王道展開としては考えられたと思うのです。もしかすると、そちらの方が作品としてのまとまりは出たかも知れません。
ですが、少なくとも私個人としては、もしこの作品の結末がそういう小綺麗で”うまいことまとまった”ようなものだったとしたら、こうして琴線に触れることはなかったと思います。
そうはせず、最後までキャラに自分を貫かせ、前進させたというところに、かこ様の意思とこだわりを感じることができました。

文章や設定には粗削りなところも少し感じられたのですが、それをおいても、白い花のような炎を操る異能や出征の際の軍人たちの光景など、細やかな描写や要素に作者の方の「好き」がいっぱい詰まっている、非常にエモーショナルな作品だと思いました。
強い意思を持つ、凛とした少女が好きな方は、ぜひ。