死にたい夏に、雪

海と川に囲まれた小さな田舎町、美河町。
和倉薫は、生まれてから十五年間、ずっとこの町で暮らしてきた。
流れていく平凡な日々。
そんな毎日に特に不満はなかったけれど、ただ、長いな、と感じていた。

八月。中学最後の夏休み。
和倉家に都会から親戚の少女がやってきた。
千条彗。
肺に病を患っている彗は、療養のために、空気の良い美河町に来たらしい。

明るくて、好奇心旺盛で、行動力があって。
その姿は、病弱という触れ込みが嘘なのではないかと思うほどだった。

彗と一緒に美河町で過ごす日々。
やがて二人は、美河町に伝わる、とある伝承に出会う。

夏に降る雪。

見た者の願いを叶えると言われる、その奇跡の風景を求めて。
最後の夏に、二人の冒険が始まる。