どこから見ても隙がない完成度。ひとつ上のステージへヴァージョンアップ?

 本作が、ゆあん様の『筆致は物語を超えるか』企画の『雪を溶く熱』のトップを走っていることは最初から知っていた。

 拝読し終えた後に、『筆致を追求した作品ではない』ことを理由に、かなり厳しい評価をしてみた。
 本来、『筆致の優劣を競うべき企画であるところ、最近はアイディア勝負の作品が多い』と感じていたからだ。
 もちろん、それがダメなわけではないが、現時点で最も評価を集めている作品が筆致を尽くしていない作品であるのはどうかと考えたからだ。
 本作の評価を星2つ以下にして、差を詰めたいと思ったのである。
 しかし……。

 本作は非常にバランスが高くて目立った欠点がなかった。隙がないというか。

 筆致が優れているわけではないが、かといって失点するほど酷いわけでもない。
 むしろ、筆致を追求すると却ってバランスが悪くなってしまいそうだ。
 アイディアに優れ、文章に問題がなく、元より読者のツボを熟知したストーリー展開に定評のある作者様である。
 以前は推敲不足が原因の誤字等が散見されたが、今回はそれすらも全くなく。

 星3個付けざるを得なかった。つまり、正真正銘のトリプルスターである。
 もし私がこの作品に星2つしか付けないとなると、それは私の中で八百長クラスの不正行為である。

 リアリティに欠けるとか、ツッコミどころは多いのだが、それをするのは野暮でしかない。
 この作品はリアリティがないことが強みなのだ。それも踏まえた上で絶妙なバランスで描かれている。

 正直、私が拝読した無月弟様の作品でも最もバランスが良くて優れていると思う。

 冒頭の仕掛けからラストまで、隙のない極上の物語をご堪能下さい🎢

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