宝石とともに語られる昔話が、そのまま怪談へと変貌していく見事な短編。最初は優雅な物語のように始まり、身分違いの恋と拒絶という古典的なモチーフから、やがて呪いのように娘へ返ってくる展開に背筋が冷えます。とりわけ最後の「今宵も新月」という語りかけは、私たちを物語の中に引き込むかのようで、不意に指に嵌めた指輪を見てしまう余韻が残りました。こんなに短い文章で、怪談の醍醐味が凝縮されている。語り口の巧さが光っています。このレビューが、物語への第一歩となれたら幸いです。
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