優しい少年と孤独な鬼姫、二人の出逢いから始まる旅を描いた冒険ファンタジー。
神官や騎士、牧歌的な村や町といった馴染み深いファンタジーの中に、ほんのり和のテイストを取り入れた、魅力の深い世界観。丁寧な心理描写とともに描かれてゆく、等身大のキャラクター。そして波瀾万丈なストーリーと、読み始めたら一気に引き込まれる作品です。
神官を志す主人公のセスは、特別に強くも弱くもない普通の少年でした。恩恵と呼ばれる特殊な能力を持っているものの、効果は使い所の難しい『半減』というもの。しかし彼は、吸血蝙蝠の子供を世話しに『異教の祠』へ通い詰めるほど、優しい人物です。
そんな彼が鬼の少女と出会ったこと。『血の落日』と呼ばれる異変によって凶暴化した魔物から村を守るため、瀕死に陥ったことは、彼にとって運命の大きな転換点となりました。
使い所がユニークな『半減』の恩恵と、人ならざる者となった代わりに手に入れた『操血術』という能力。セスはこれを組み合わせて強敵と戦う力を得、弱きを守るため奔走します。読み進める中で、優しさと「ありがとう」が光る物語という印象が残っています。
道中、鬼の姫と仲良く喧嘩するシーンで笑わせられたり、セスや彼女の心情吐露に涙したりと、感情が揺り動かされる物語でもあります。ぜひ、じっくりゆっくり読んでみてください。
真面目で不器用な生き方しか出来ないけれど心優しい主人公セス。
やや特殊な”恩恵”持ちであるセスが森で美しい少女と出会ったことから、彼の運命は大きく変わり始めるのでした。
少年漫画の王道とも言うべき展開が丁寧な筆致で描かれています。
大きな力を手にした少年が大切なものを守ろうと必死に戦う。
しかし、守りきった彼に向けられる目は感謝ではなく、疑惑と畏怖、恐怖。
それでも守れたことを喜び、人を恨まない主人公セスの姿に多くの人が感動することでしょう。
人ならざる力を手にしたうさぎのおにーちゃんと美しき鬼の姫。
主従二人が進む先に待つものは果たして?
うさぎのおのーちゃんが何か、気になった方は是非、御一読を!
こういった見せ方があるんだ!と、とても参考になる一人称小説です。
登場人物の性格や考え方がすごくわかりやすくて、読んでいると自然に作品と一体になっている感覚がします。
セスくん視点は居心地がよく、フィルミナさん視点で魅力が倍増し。
誰の視点で場面が描かれるかが楽しい作品です。
個人的には「半減」の設定がとても面白く、最初に読んだときは、バランスを取るのが難しくないかな?と思ったのですが、その他の設定も同様に世界観にきちんと馴染んでいます。
なので、これからどんなエピソードが増えていくんだろうと読みながらワクワクしてきます。
長く応援し続けていきたい面白さと作者の腕がある、そんな作品だと感じました。
主人公とヒロインが想い合っている描写が好きな身としてはもの凄くストライク!でした。
同じように私も「少年漫画的」で「王道ファンタジー」を書いているので、まさに「こういった作品を求めていた!」のお手本になりました。
「王道」作品を、「外さずに書ける」手腕は、思っていた以上の才能がいると書いてみて痛烈に感じたので、作者様に尊敬の念を抱いております。
そして、私も頑張っていきたい!という勇気をいただけました。
読ませていただき、ありがとうございます。応援しています。
作品に足を運んでいただいたご縁で、この物語に出会いました。
更新分まで読み終えましたので、レビューさせていただきます。
人ならざる力を手に入れる王道ファンタジーの始まりから、人間同士のすれ違い。そしてキャラクター達の内面にある思い、感情というものが簡潔に、しかし厚みを持って表現されており、とても読みやすいものと感じました。
そして他の方も絶賛されております、戦闘描写。能力の使い方やキャラクターの動き、そしてその中で感情を込めるという書き方は、ただの戦闘シーンで終わらない面白さ。本当にお見事だと思います。
ファンタジー好きなら、この物語を読まないなんてもったいない。
他の皆様も是非読んでみてください。
大きな力を手に入れれば人を救うことが出来るかもしれません。
でも弱い人たちから見れば自分達の驚異となる力もそれから守り退ける力も同じ大きな力というだけで恐ろしく感じるのかもしれません。
鬼の力という大きな力を吸血鬼のフィルミナから与えられたセスは人を救うために使った力で人々から蔑まれ心の底から傷つきますが、それでも持ち続けた優しさで他の人々を救い又救われていくそんな姿に心打たれます。
ただ強いだけでなくセスが元から持つ自身に掛かる事を半減させる力の使い方が「その発想はなかった!」と言ってしまう位素晴らしいです。
鬼の圧倒的な力を半減させる力が上手にアシストしていく様は『柔と剛の共演』といった感じで戦闘シーンを引き立てています。
それに強い力を得ても慢心せず精進するセスと日頃は強気なフィルミナが時折見せる弱さ、このどちらにも胸がきゅっとしてしまいより深くこの2人のことが好きになってしまいます。
セスとフィルミナの旅の行方を私は見届けようと思います。
世の中には良かれと思ってやった事が、相手にとっては余計なお世話になったり、逆に煙たがられる原因となったり、または結果的に悪い方向へと事が運んでしまったりと、いわゆる『ままならない』ことが往々にしてあると思います。
そういう世の中の理不尽さ、理解されないという孤独……そういったところで、主人公セスと読み手の間に繋がる部分が必ずどこかにあって、それが一人称視点という特徴と相まって共感を覚えやすく、セスの物語から目が離せなくなる理由の一つではないか……そう思えてきます。
また、それらの話が締めるところはきっちり締めて、また笑いを取る場面では適度に緩めるという、話のメリハリが上手く整えられていて読みやすいというのも、この作品の魅力となっています。