薄明の鬼 ~人と魔物と龍の世界で~

作者 蟹野 康太

手をつなごう、孤独な悪夢は終わりにしよう。人ならざる少年少女の旅物語。

  • ★★★ Excellent!!!

 優しい少年と孤独な鬼姫、二人の出逢いから始まる旅を描いた冒険ファンタジー。
 神官や騎士、牧歌的な村や町といった馴染み深いファンタジーの中に、ほんのり和のテイストを取り入れた、魅力の深い世界観。丁寧な心理描写とともに描かれてゆく、等身大のキャラクター。そして波瀾万丈なストーリーと、読み始めたら一気に引き込まれる作品です。

 神官を志す主人公のセスは、特別に強くも弱くもない普通の少年でした。恩恵と呼ばれる特殊な能力を持っているものの、効果は使い所の難しい『半減』というもの。しかし彼は、吸血蝙蝠の子供を世話しに『異教の祠』へ通い詰めるほど、優しい人物です。
 そんな彼が鬼の少女と出会ったこと。『血の落日』と呼ばれる異変によって凶暴化した魔物から村を守るため、瀕死に陥ったことは、彼にとって運命の大きな転換点となりました。

 使い所がユニークな『半減』の恩恵と、人ならざる者となった代わりに手に入れた『操血術』という能力。セスはこれを組み合わせて強敵と戦う力を得、弱きを守るため奔走します。読み進める中で、優しさと「ありがとう」が光る物語という印象が残っています。
 道中、鬼の姫と仲良く喧嘩するシーンで笑わせられたり、セスや彼女の心情吐露に涙したりと、感情が揺り動かされる物語でもあります。ぜひ、じっくりゆっくり読んでみてください。

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