第20話
それから我が家は大騒ぎ。
ヤツのお祝いパーティが私の婚約祝いになって、複雑な表情をする父さんと、不思議がる弟以外は祭りのような賑わい。
近所の親戚の伯父さん伯母さんまで呼んでの大宴会になってしまった。
騒ぎの中、私はヤツを連れ出して、私の部屋に連れて行く。
お酒も入った大騒ぎ、主役が抜けてもその騒ぎが収まることは無く、部屋の扉を閉めてやっと小さな騒ぎになった。
「ふ~やっと少し静かになった」
「エエんか? 抜け出て」
「大丈夫、あの人達は騒ぐ為に理由がほしいだけやから。な、見て」
私はヤツをベッドの方まで連れて行き、傍にある窓から夜空を見せる。
「あの場所より星の数は少なくなるけど、月が良う見えるやろ?」
「へぇ、ホンマや」
「この場所から空を見るのは久しぶり。でも、出会うまでは見上げたことも無かった」
「そうなんか? 俺なんか暇があれば見上げてたけど」
「【良い事】って言うのは起こさないと起こらないくせに、【悪い事】っていうのは起こさなくったって起こるんだから嫌になるな~」
「何やそれ?」
「ってね、私、ずっと思っててん。でも、良い事が起こさなくても起こった。これって満月のせいかな~」
「アホやな~悪い事も良い事もそれがあったから、俺はお前に出会えたんやん」
あまりにロマンチックなことを言うヤツに一瞬、目を見開いて驚いた。
すると、ヤツの顔はあっという間に真っ赤になって、私はクスクス笑う。
何時だってヤツは私の表情に赤面する。
そして、私の顔から笑顔が溢れるんだ。
きっと、良い事も悪い事も起こさなくっても起きているし、起こして起きているのかもしれないけれど……。
良い事はそんなに感じていないだけなのかもしれないね。
悪い事って凄く印象に残るから。
そうね。
私の失敗も成功も、その全てがなければ今の私も、貴方に出会えた私も居なかったね。
でもね、私は思う。
あの月明かりの夜。
貴方に出会ったのはきっと……、きっとお月様のが私たちをめぐり合わせるように仕組んだんだって。
そして、良い事を起こそうとしたからこそ、今があるのかもしれないって。
ねぇ、これからも。
ずっと一緒に、良い事を起こして行こうね。
お月様を見上げながら。
月明かりの夜。 御手洗孝 @kohmitarashi
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