後日談

  〇



「ああ、また模試の結果悪かった……」


 ぼくは盛大にんでいた。冬休みから、勉強に力を入れ始めたが、模試の結果は「もうおそいよ」と言われているような気になった。


「まあ、前回に比べれば大分良いじゃん」


「まあ、そんなんだけど……」


 ぼくたちは自転車をして帰路を歩いていた。別に乗っても良かったんだけど、それだと家まですぐ着いちゃうし、別れるのが早いから。


「鹿野さんはk大でしょ? ぼく頑張がんばれば入れるかな?」


「いや、その点数じゃ厳しいでしょ」


 ぐむう。やっぱり無理かあ。


 その時、一ひきねこぼくたちの前を横切った。


「あ、ねこ


「ホントだ。くぁいい」


 相変わらず鹿野さんはねこに弱い。うちのクララにだって骨けにされているし。


「そう思うと、鹿野さんがねこ好きで良かったよ。そうじゃなかったら、今こうして一緒いっしょに帰ってないだろうし」


 これぞ、まさに奇跡きせきだな。うん、うん。


「それ、ちょっとちがうよ」


「え? でも、ぼくがたまたまクララの動画を見せたから鹿野さんが食いついたわけで」


「ホントはそれ、逆なんだ」


 と、言いますと?


「ホントは、金子に話しかけたくてクララをきっかけに話しかけたの」


 え? それ、マジですか?


 その真相を聞こうと思ったが、彼女かのじょかたくなに拒否きょひするので、聞けずじまいになってしまった。


「そんなことより、約束、忘れてない?」


「約束?」


「下の名前で呼び合うっていう約束!」


 わ、忘れてた。でも鹿野さんだってさっきぼくのこと金子って呼んだんじゃない?


 ゆっくりと歩いていたんだけど、ぼくたちはいつもの別れ道にかった。


「じゃあ、また明日あしたね。良太」


「うん、さよなら。あ、彩夏あやか


 このこっぱずかしいこの気持ちは、いつまでも、忘れたくないなあ。自転車をこぎながら、ぼくはそんなことを考えていた。

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鹿野さんはそっけない 白玉いつき @torotorokou

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