第4話

  〇


 クララを撮影さつえいし、鹿野さんに見せることがぼくの日課になっていた。


 クララには申し訳ないと思う。こういう人間のエゴにクララを持ち出してしまって。しかし、こうでもしないとぼくは鹿野さんと話せないし、クララにはもう少し手伝てつだって頂きたい。


「ねえ、ねえ、どうしていつもクララをってるの? あたしもって!」


 そして妹、お前はうるさい。


 妹がぐずるので、動画や写真をるときは大抵たいてい妹と一緒いっしょになった。


 そして大抵たいてい、妹は写真に写る時、変顔をした。


「いつも妹いるよね。可愛かわいい。名前なんて言うの? 今何歳なんさい?」


「千代っていうんだけど、今年ことしで小学二年生になるんだ」


「小二? じゃあわたしの弟と一緒いっしょだ」


「鹿野さん、弟がいるんだ」


「そう。生意気で図々しい弟なんだけど。千代ちゃんとは大ちがいだよ」


「いやいや、あいつもウチではめっちゃうるさくて面倒めんどうくさいよ」


「ははっ。どこも同じような感じなんだね」


 家族ネタで盛り上がった。




  〇


 クララの動画を見せる時間だけ、ぼくは鹿野さんと一緒いっしょにいられる。


 それは休み時間だったり、放課後のちょっとした隙間すきま時間だったりする。(鹿野さんはバレー部でしかも一年生ながらレギュラーだから部活も大変なのだ)。


 時間もバラバラで見せるだけの五分間くらいだったり、長いときだと昼休み丸々使ったりした。


 ぼくにはやましい気持ちがないわけでもなかったが、純粋じゅんすいにこの時間が好きだった。


 だから、クラスでぼくと鹿野さんが付き合っているといううわさが流れたときは、ぼくのこの安らぎの時間も長くは続かないとさとった。


 


 ○

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