大人にもあの頃の熱を灯す良作。

部活をやってきた人たちにとって、ある意味当たり前に存在していた「最後の大会」

それを奪われた主人公の喪失感や苛立ちや熱量、それらがとても自然で、等身大な文体で描かれているのが良かったです。

あの頃の、熱。あの日々でしか感じられない感情の揺れ動き。

大人になった自分も思わず瞳を潤ませました。あんなに素直に感情を出せる日々が自分にもあったなあと……。

文章としては、読みやすく、癖のない文体だなという印象を受けました。もちろん、良い意味で引っかかりを感じない滑らかな文章、という意味でです。

あえて課題を挙げるなら、情景描写で読者の心に残るワンフレーズがあればなあと個人的には感じました。小説の印象を後に思い出した時に、自分がまず思い浮かべるのはインパクトに残る「ワード」なので。

最後に。作者様の他の作品も読んでみたくなりました。良い小説に出会えてありがとうと言いたいです!

それでは、なむなむ。

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