芽
普段何気なく進んでいく日常。
やることは毎日同じ。
朝起きて、会社に出社して、帰ってきて、寝る。
何の変化もなく、ただダビングされたかのような日常がずっと続いていく。
正直、暇だった。
今日も一日が始まった。
朝起きて顔を洗い、昨日の夜のうちに作っておいたおかずを冷蔵庫から取り出し、冷凍しておいたごはんをレンジに入れて温める。
温めには少し時間がかかるので、その間にコップに水を入れてベランダに向かう。
何の変化もない日常に、ささやかな変化が欲しくて、観葉植物やパセリやバジル、ベビーレタスといった野菜の種を買ったのだ。
マンションでは土は重くて処分に困るので、スポンジの培地に水と液体肥料で育てられる水耕栽培だ。
小さな鉢に収まった色とりどりの観葉植物たちに水をあげてから、種の様子を確認する。
「――あ」
これまで何の変化もなかった水耕栽培のトレーに、小さな双葉がいくつも芽吹いていることに気付いた。
そのどれもが朝日の柔らかな日差しを受けて、伸び伸びと気持ちよさそうだ。
私は嬉しくなって、双葉たちのように朝日を浴びながら伸びをした。
すると心に引っかかっていた、かすみ雲のようなモヤモヤがあっという間に霧散し、晴れやかな気持ちになる。
日常の中のささやかな変化。
それが私の心に彩りを加え、生活を豊かにしていく。
今日はなんだか良いことがありそうだ。
朝食や身支度を済ませて、私は家を出る。
それでも日常は続いていく。 紀乃鈴 @Kino0224
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