あとがき

【作品コンセプト】

 ロングコートにグラサンのストイックな暗殺者を主人公にした作品を書きたい。最初はそこから始まった。好きな中国俳優にイマジネーションを得て、出身地をハルビンに決めた。相棒を日本人にして、日本と中国の文化の違いを交流しながら体験する面白さを書こう、ということで自分の体験や感動を元に食や文化を取り入れて2人が交流を深める様子を書いていった。


 主人公曹瑛には目的が必要で、それが兄を殺された復讐だった。ただ血なまぐさい復讐劇ではつらいので、平凡な一般人の伊織の目を通した感覚でバトルを書いていった。カッコいい戦いの中に普通の人の感覚や突っ込みが混じる面白さを目指した。

 そのうちにキャラクターが増えてきたので、群像劇へ。この辺になると完全にアドリブ、いつの間にかキャラクターが勝手に動く、そんな感じだった。友情や信頼といった当たり前のことをベタに書くことにした。

 

 そしてキャラクターはすべて信念を持って行動している。それが自分のためだったり、人のためだったりするけれど、みんな自分から行動して何かを変えようとしたり、乗り越えようとする姿を書いた。


 当初はカッコいい暗殺者が活躍する、だけのコンセプトがこんなに手を広げてしまうとは自分でも驚いている。最初から狙って考えていなかったが、書いていくうちに人と人との絆の物語だと思えてきた。最後までそれを大事に書き上げることができたのは良かったと思う。


【キャラクターこぼればなし】

伊織:ごく普通の一般人。お人好しで純粋というキャラクターで最後までブレていない。しかし、普通すぎて特徴がない。途中まで影の薄さに悩まされた。しかし、曹瑛を助けたいという信念で行動することでキャラがそこそこ立ってきたと思う。天然なところもギャグ要員であり、後半から動かしやすかった。


曹瑛:ストイックで無口、無愛想な殺し屋。しかし、伊織と一緒に過ごすことで変化していくというキャラにした。だんだん人間らしさを取り戻す姿は自分でも気に入っている。暗殺者の設定なのに、誰も殺さずに話が進むのは殺してしまうと伊織が殺人を容認することになってしまうため。初期の段階からこれは決めていた。


榊:日本のヤクザ側にも曹瑛の敵になるキャラを、と榊を考えた。最初は引き立て役だったが、そのうちライバルで信頼できる存在という立ち位置にした。高谷が弟というのはアドリブ設定で、伊織に対して榊を慕う役を作りたかったという理由。書いているうちに良いコンビになってきた。


高谷:タカヤと呼ばせておいて、実は名字というトリッキーな演出をしたくて決めた名前。龍神の被害を語る役のみに単発キャラのつもりが榊の弟に昇格。その後の団体戦でIT系頭脳派の役割にちょうど良いと思ったので再登場、レギュラーとなった。


孫景:グループにいれておきたいゴツい系気の良い人。武器のブローカーという設定で何でも屋として設定。結局あまり銃火器を利用しなかったのでその点では影が薄くなってしまったが、劉玲とのコンビでキャラが立った。


劉玲:プロローグから考えていた実は生きていた兄。上海九龍会のボス側近くらいの位置でラスボスにしようと思ったが、中盤で仲間になってもらった。曹瑛とのバトルは当初から決めていた。関西弁なのは主要キャラが増えてしまったので、台詞だけでキャラがわかるようにしたかったため。曹瑛・孫景・劉玲で実はそれぞれ三国志の魏呉蜀の主君になっているが深い意味はない。


【大家謝謝!!】

 この作品は初めて書き始めた創作長編で、無事に完結できたのは本当に嬉しい、そして寂しい。ご飯の献立から次のバトルはどうしようまで、いろんなことを妄想して一気に書いていった。それだけ勢いで作れた作品。主要メンバーにはとても愛着がある。一旦お別れになるけど、またそのうちに。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


Special Thanks:Illustration:長崎祐子

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東方伝奇ー平凡な元リーマンが異国の暗殺者と紡ぐ絆の物語 神崎あきら @akatuki_kz

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