希望をくれる人生のランナー

重厚な作品ながら、軽妙な語り口で描かれる本作は、視覚障害者のサムと『俺』の友情の物語です。
4,000文字という少ない文字数ですので、必然的に2人の会話は最小限となります。
しかし、それでも熱い友情を感じさせるのは、サムと『俺』の、才能と境遇を対比させつつ、『走る』という行為を通して2人の信頼関係が構築されているからだと思います。

また、本作の魅力のもう一つが、『俺』の豊かな語りです。
サムの境遇を語りながら、そこに反射するかのように『俺』の感情と言動が描かれ、試練の連続の中でも、正に鏡のようにシンクロする2人の心が、希望への歩みを表現しています。

2人は陸上競技選手のランナーとして、そして、人生のランナーとして、希望を与えてくれる走りを見せてくれました。

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