点と線

 世界を滅ぼすという魔女と契約し、魔女を眠らせれば世界に魔力が満ちて救われる。その繰り返しで世界が成り立つというニブルヘルムを舞台にカル・クライムの物語が紡がれる。妹を助けられなかったことを悔やんでいたカルは、成り行きでコルディナス帝国の皇女リオナとの旅に出ることになった。そして物語のもう一つの軸となるリオナには、過去に魔女と戦った者達の映像が見え、魔女と契約する運命が待ち受けていた。
 このPORTABLE FANTASIAの面白いところは、リオナが時折垣間見る「映像」によって先の魔女との戦いやその時の人物の心情が語られ、世界の謎を点として少しずつ読み解くことができるところにあります。プロローグや映像の不穏な描写によって真実が浮かび上がり、やがてそれらが線となってつながっていくのだと思うと、カルたちの大立ち回りの爽快さに喝采を送りながら、別視点で物語の重厚さを味わえるという二つの楽しみを得られるのです。
 神々との契約、魔女との契約をすれば命を落とす運命を甘受するリオナに対して、カルはどのような選択をするのか。世界の理に対して過去の契約の再現をするのか、それとも否定するのか。その時の選択と行動まで目が離せない物語です。
 また人の優しさの機微が巧みに表現されており、会話ではなくカメラ越しの描写のように視覚的に読み取れるのも魅力です。

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