最終話 おじいちゃんのおにぎりへの思い

【僕はここにいます。

 おじいちゃんのお店『おにぎり定食屋甚五郎』にいます。

 おじいちゃんは心を込めておにぎりを握ります。


「美味い物を食ったら皆笑顔になる。腹が膨れれば優しい気持ちになれる。悩みを解決する元気や力が湧いてくる」


 僕はおじいちゃんと御飯を作ることが大好きです。

 明日は妖怪九尾総大将ハクセンが妖狐達と畑作りを学びに来るよ。

 父さんはいったん関東に戻りました。仕事をどうするか会社の社長さんと話をするために。

 社長さんは父さんが無事だったのをとても喜んでくれまた働いて欲しいと言ってくれているみたい。

 僕ら兄妹はおじいちゃん家でそのまま暮らすことになりました。

 妖怪や人間の友達がたくさん出来て僕ら兄妹は毎日楽しく過ごしています。

 母さん心配しないで下さい。

       雪春より――】




 僕は天国にいる母さんに手紙を書いて仏壇に置いてお店の厨房に戻った。

 おじいちゃんから米研ぎを頼まれていた。


「お兄ちゃ〜ん、写真出来たよ」

「兄にぃ、彩花ねぇ、みんなの似顔絵描いたよ」


 僕は二人の妹に呼ばれて顔をあげる。

 美空の持つ写真には人間と妖怪の友達が写っていて彩花の描いた絵にはたくさんの友達がえがかれていた。


「妖怪組、写真に写ってるけど大丈夫?」

「写真でも妖怪って視える人にしか視えないみたいよ」

 それなら安心だ。

「彩花の絵、上手でしょ? 兄にぃ、お店に飾って」


「良いニャン、良いニャン。飾るニャ」


 虎吉が彩花の足にすり寄っている。

 美空はポン太を抱っこして僕は豆助を抱き上げた。


「そういや蔵之進さんは?」


 僕がお店を見渡すとサクラさんがぴょこっと厨房に顔を出した。


「蔵さん、甚五郎さんと満願寺に行ったわ。和尚さんと修行だって。ハクセンにやられたのが悔しかったのね」


 修行かぁ。僕も剣道でもやろうかな。その時は蔵之進さんに教えてもらおう。


 それから僕らは皆でおやつに甘い美味しいホットケーキを作ってたらふく食べた。


 外に遊びに出掛けたはずの虎吉が、慌てて店に飛び込んで来た。


「大変ニャン。雪春、店の前に人が倒れてるニャッ!」


 それは大変だ。

 僕等は皆で店の外に出た。


「……はっ、腹が減った〜。何か食わしてくれ」


 倒れた男の人を抱き起こすと彼はそう言った。

 これから僕はこの人におにぎりを握ってあげることになるだろう。

 さぁ、急いで支度をしよう。


 ――このお店には困ったお客様や悩みを抱えたお客様が訪れます。


 どうやら今日もそんなお客様がやって来たようです。



       おしまい

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あやかしさんも、さあ、どうぞ! うちは『おにぎり定食屋甚五郎』です。 天雪桃那花 @MOMOMOCHIHARE

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