レシピ13 料理が出来なければ惣菜を買えば良いじゃない!(本編とは全く関係ありません)
「勝負の内容はゆめが1人で3品以上の夕食を作ること。これでどう?」
環姉の意見にお母さんが軽く頷いた後口を開く。
「ならそのメニューはその日のお昼に私が指定するわ。それからゆめが1人で買い物を始めるところからスタートして夕食を作る。そして審査よ。日時はそっちの用意が出来てで良いわ」
「えぇ、望むとこよ!」
環姉とお母さんにより話は一気に進み何故か俺らの結婚を認めてもらう為に料理でお母さん達を納得させると言う勝負をすることになった。
ん? そもそも結婚を認めてもらう為の挨拶だったっけ?
あれから数日後おれ、裕仁はゆめと一緒に環姉の運転する後部座席に座っている。
「ねえお姉ちゃん、どこ行くの?」
「ゆめ、あんたさ味覚音痴なんでしょ? 昔からなんでも食べる子だと思ってたけどまさか味がよく分かってなかったとはねぇ。
ま、そんなゆめにもしかしたら役にたつかもしれない所よ」
それ以上は教えてくれないとこを見るに着いてのお楽しみってところか。
しばらく車で走っていると海岸沿いの道へと出てやがて一軒のカフェの駐車場へと入る。
「さあ着いた」
こじんまりとしたログハウスのカフェの看板には『うさぎのしっぽ』と書かれてあった。
カラン、カランと鈴の音の鳴るドアを開けると木目調のお洒落な空間が広がり、兎に関した雑貨が可愛らしく置かれている。
隠れ兎とでも言うのか然り気なく顔を除かせている兎や尻尾だけ見えているう兎なんかがいる。
ゆめがそれらを見つけては嬉しそうに報告してくる。
うん、やはりゆめは可愛いな。なんかこれ久しぶりに言った気がするな。
「やっほ~、久しぶり今日は突然ごめんね」
環姉が手を挙げて挨拶する先にはお店のカウンターの中に立つ綺麗めの女性と背の高い優しそうな男性がいた。
「おひさぁ~たまき元気そうねぇ。ってあったの3日前だけどね~」
「うちのと食べに来たばっかりだからね」
カウンターの女性は、ほわ~とした感じで話し環姉と笑い合う。
俺らに気付くと微笑みかけてくるような優しい感じで話しかけてくる。
「君たちがたまきの妹さんとその彼氏さん?」
「えぇ、ゆめの彼氏の入月 裕仁です」
「あ、はい、ひろくんの彼女の黒羽 夢弓です」
2人が自己紹介をするが、ゆめよ今の流れだと名乗るべきは「彼女の」ではなく「妹の」夢弓だったと思うが。
そんな俺らを見て楽しそうに微笑みながら女性が自己紹介をする。
「私はたまきの大学の時の同級生で
「東窪
旦那さんも優しそうな笑顔で挨拶してくれる。ほわ~とした雰囲気の夫婦だ。
「自己紹介も済んだところで今日来た理由、それはゆめの味覚音痴対策よ! これでお母さんにも勝てるわ」
環姉が自慢げにそう宣言する。
「たまきの説明、勢いよすぎて分かりにくいって。えっとゆめみちゃんと裕仁くんまずは座ってこれを食べてみて」
カウンターの椅子に座ると小さな器に入ったビーフシチューが置かれる。
「うちの看板メニューなんだけど食べてみてくれるかな?」
旦那さんの悟さんから勧められビーフシチューを食べる。濃厚な味によく煮込んであるホロホロの牛肉が口の中で溶けて旨味が広がる。
食べ終わるとまたビーフシチューが出される。
再び食べる……塩辛い。
ゆめを見ると首は傾げるものの普通に食べている。
次に出されたビーフシチューを食べると今度は甘い。そしてゆめは先程と同じく食べている。それからいくつか出されて試食する。
「ゆめみちゃんはどれが美味しかった?」
「一番最初に食べたやつです。後は7番目はちょっと濃いけど他のよりは美味しいと思いました」
るりさんと悟さんが優しく微笑む。
「ゆめみちゃんは味は分かる。ならそれを覚えてそれだけを作れる様になるの。一つ一つの料理の味を決めてそれ以外を作らない。
簡単に言うけど一つ一つ料理の味を決めていく地味で大変な作業になるわね」
突然の話に目を丸くして聞くゆめにるりさんが話を続ける。
「大変な作業になるけど裕仁くんと一緒に味を決めていく。つまり裏を返せば『裕仁くんの為だけの、裕仁くん好みの、裕仁くん料理』が出来るってわけなのよ~」
なんかどっかの演説で聞いたようなフレーズを言われてゆめは目を輝かせて食い入るように聞いている。
そこに悟さんもアドバイスをくれる。
「僕たちはお医者さんじゃないから味覚音痴を治すとかは出来ないよ。ただ味が分かるならやり要はあるかなって話。
一品づつゆめみちゃん専用レシピを作って味を決めていく、勿論塩分の取りすぎとかは気を付けないといけないから出来たレシピは持って来てるりに見せて」
「こう見えてるりって栄養士だからね」
ここで環姉が自慢げに話に入ってくる。
「こう見えては余計だけど、まあそれなりに栄養面とかはアドバイスしてあげれるはずだから」
るりさんが胸を張りドンと来いみたいに胸を叩く。
「提案は嬉しいんですけど私にそこまでしてもらう理由が無いと言うか……」
「たまきの紹介だし、レシピ持ってくるときにちょっとお金を落としてくれればOK! ついでに友達とか知り合いに宣伝してくれれば尚OK♪」
るりさんがニコニコしながら答える。
そこから話は進みレシピが出来たら持っていく、また分からないことがあればるりさん達を訪ねる。あと細かいことはそのつど決めようってことで話はまとまる。
その帰り道環姉が物凄く自慢げにるりさん達を語る。友達をここまで自慢出来るって羨ましいもんだ。
────────────────────
「これはどうかな? 濃い?」
私こと夢弓はひろくんが味見するのをドキドキしながら見ています。
「う~ん、逆に何か足らないような……出汁をもう少しとるか、具材を増やした方が良いかも」
私はノートにメモを書き込む。
「ノート何冊目だっけ?」
「えっとね……」
私は持ってきているノートを取りだし数える。
「5冊目だよ」
「凄いな、7ヶ月でもう5冊かぁ、結構レシピ増えたよな」
「うん、1つのレシピに4ページ使ったのもあるけど結構増えたかな」
ひろくんに頭を撫でられる。
「凄い頑張ったな」
「にへへへへ、ひろくんがいたから頑張れたんだぁ」
この流れに任せてひろくんに抱きつく。私を優しく抱き締めてくれるひろくんが何かに気付いた様に手を伸ばす。
「なあ、何で1冊目だけタイトルみたいなのが書いてあるんだ? 他のはレシピノート②とかなのに」
「えっとね、それひろくんにもらった記念すべき1冊目だからタイトル付けようと思ったんだけど。ちょっと失敗してから何個か書いたと言うか……にへへへへ。
その後のは、るりさんに見せる様になったから恥ずかしいから普通にしたんだけど」
ひろくんが1冊目のノートの1ページ目を開いて固まる。
「ゆめ、この文ってレシピと関係あるのか……消さないか」
「えぇ~関係あるよ。記念だし」
頭を押さえてなにか言いたそうなひろくんに私は唇を重ね文字通り口を封じてしまう。突然の事に驚き恥ずかしそうにするひろくん。
最近はひろくんのリアクションを見る余裕はありますよ。まだちょっと恥ずかしいけど。
今日のレシピ(豚汁)にも今の事を記入しようかな。
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