第11話 背徳的な体
三十分ほどして、髭を生やした年輩の騎士がやって来た。
「戦果確認をする。所属パーティー名と名前を申告の後、代表者は戦果戦況を報告せよ」
俺とパルルさんは立ち上がり、髭の騎士に申告する。
「アイアンメイデン所属。パルル・ウィンザー」
えっ!?
ウィンザー!?
パラなんとかは?
ウィンザーって何だよ!
じゃあ、戦死した騎士コンソッポ殿は、結局パルルさんにかつがれていたのか!
気の毒に……。
俺は心の中で騎士コンソッポ殿に手を合わせてから申告した。
「アイアンメイデン臨時メンバーのケンヤ・クボ」
髭の騎士は帳面にメモを始めた。
手に持っているのは、墨の欠片に見える。
報告はパルルさんが簡潔に行った。
「盗賊四名が、そこの扉から逃げて来た。ケンヤがすぐに三名を討伐。コンソッポ殿が一名を相手取ったが、強力な火魔法を受け戦死。その後、ケンヤが一名を討伐した」
「ほう! 一人で四人も! アイアンメイデンのケーンーヤ・クーボーだな。確かに記した。コンソッポはダメだったか……」
最後に髭の騎士が沈痛な面持ちで、つぶやいた。
しばらく間をおいて、パルルさんが答える。
「勇敢に戦い。亡くなられました。強力な火魔法で、ほぼ即死でした」
「うむ……ご遺族には、そのように伝えよう。両者ともご苦労だった!」
髭の騎士は、次の現場に行くのだろう。
さっさと引き上げて行った。
「さあ、仕事は終わりだ。帰ろう」
「ああ」
パルルさんと一緒に本隊のいる盗賊団のアジトへ向かった。
盗賊団のアジトになった建物は、外からでも分かるくらい強烈な血の匂いがした。
アイアンメイデンの四人は、建物の外で待っていた。
斥候のネコ獣人ミキさんは飄々といった風で壁に寄りかかっていた。
アデリーナ教官は、片手を上げ挨拶をする。
軍服風ジャケットを羽織ったヘルガさんは、気を失ったテレサさんをおぶっていた。
歩きながら、俺はアデリーナ教官と話した。
「ミキから聞いた。大活躍だったそうだな」
「四人斬った」
俺は事実だけを淡々と告げた。
脚色をしなくても、盗賊四人討伐と言う事実はインパクトが強い。
下手に盛るよりも、事実を伝えた方が良いという判断だ。
「さすがだ! 私が見込んだだけはある!」
アデリーナさんの好意的な反応を見ると、どうやらその判断は、正解だったらしい。
「パルルさんを守ると約束をしたからな」
「うむ。感謝する。これを」
アデリーナさんが何か手渡して来た。
手を開いてみると金色に光る硬貨があった。
金貨だ!
10万クローナ金貨!
節約すれば一月は過ごせる。
この異世界だと、かなり大金だ。
俺は金が無いので、非常に助かる。
「良いのか?」
「ああ、報酬の前渡しだ。精算は後日きちんとやるから、当座の報酬と思って受け取ってくれ」
「そうか。じゃあ、ありがたく頂くよ」
「うむ」
アデリーナ教官は、金払いも良いし、リーダーとしても信頼出来る印象だ。
ちょっと聞いてみるか。
「俺は、所属するパーティーを探しているのだが、アイアンメイデンはどうなんだ?」
「我々は女性だけのパーティーなのだ。ケンヤの腕は間違いないが、男は加入できない。すまんな」
「いや、良いんだ。また、仕事があったら声を掛けてくれ」
「ああ、頼りにさせてもらおう」
速攻で撃沈してしまったが、聞くだけはタダだ。
断られたくらいでイチイチへこんではいられない。
そのまま夕方の街をゆっくりと歩きながら、一人、また一人とばらけて行った。
最後は、俺とパルルさんだけになった。
「祝勝会とか、打ち上げとか、やらないんだな」
「アイアンメイデンは、やらんな。家族持ちもいるし。ミキなど五人の子持ちだぞ」
「マジかよ!」
あのネコ獣人、母ちゃんだったのか!
ネコも多産?
五人の子持ちに見えないな。
種族の違いだな。
「ケンヤは、どこに泊っているんだ?」
「決めてない」
「そうか。なら私の部屋に泊るか?」
「良いのか?」
「ああ。初めての戦闘の後では、ちょっと心配だ。一人にならない方が良い。私の部屋は風呂もついているからな」
「風呂か……それは良いな! じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「ああ、そうすると良い。夕食をどこかで済ませてから行こう」
パルルさんの心遣いがありがたい。
確かに初戦闘で、心にかなり負担がかかっている。
心的外傷後ストレス障害だったかな……PTSDとか……。
そう言うのがあるかもしれないから、人と一緒にいて話しでもした方が良いのだろう。
食事は居酒屋でエールを飲みながら済ませた。
俺は肉を食うのを躊躇ったが、パルルさんに無理矢理食わされた。
何でも初戦闘後肉を食べるのを忌避すると、そのまま肉を食べられなくなるヤツがいるそうだ。
鉄は熱いうちに打てじゃないけれど、何事も早めにケアした方が良いって事だな。
パルルさんの部屋は、ちょっと高そうな旅館だった。
先に風呂を借りベッドで横になっていると、パルルさんが風呂から上がって来た。
大きなタオルで、体がスッポリ隠れている。
体形が子供なのだから当たり前だ。
パルルさんは、そのまあ俺の体の上に跨って来た。
えっと……やる気満々ですかね……。
「さて、ケンヤ。私から礼をさせてくれ」
「礼?」
「今日は私を守ってくれたろう?」
「ああ」
「嬉しかった」
パルルさんが抱き着いて来る。
俺は優しくパルルさんを抱き返し、頭を撫でる。
頭を撫でながら考えた。
パルルさんは、見た目は幼いけど三百才オーバーだよな。
つまり、セーフ……。
パルルさんが唇を重ねて来る。
見た目と違ったねっとりとした舌使いに、俺も答える。
自然とお互いの腰が動く。
「こういう体は嫌いか?」
タオルを外したパルルさんの体は、背徳的な匂いがした。
俺は今日の戦闘よりも激しく、パルルさんを蹂躙した。
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