第12話 大人の女

 翌朝、目を覚ますと知らない女がいた。


「ケンヤ。目が覚めたか。食事が来ているぞ」


「……」


 その女は、部屋に備え付けの上等そうな丸テーブルに、ワゴンから料理を並べている。


 年の頃は……二十四とか?

 メリハリボディの良い女だ。

 顔は見た事あるようなないような……。


 待てよ。

 見た事のあるローブに、見た事のある三角帽子……。

 聞いた事のある声!


「パルルか?」


「ふふ……そうだ」


 ええ!?

 いや、昨晩は子供体形だったじゃん!

 それが何で一晩たったら、大人化してんの!?


「驚いたろう? 説明は朝食をとりながらな」


「ああ」


 俺は手早くズボンとシャツを身に着け、風呂場のタライで顔を洗う。

 戻るとパルルは丸テーブル横の高そうな椅子に足を組んで腰かけていた。


 幼い版パルルの時は気が付かなかったが、このローブは前が割れているタイプだ。

 短いスカートから伸びた足、特にパンと張った太ももに目が釘付けになる。


 俺の視線を受けて、パルルは余裕でクスリと笑った。


「ほら。座れ。これ、スープ」


「ん。ありがとう」


 朝食は、パンとスープにステーキ。

 朝からガッツリだが、昨日消耗した体には嬉しい。


 食べ始めるとパルルが説明を始めた。


「私の一族はエルフの中でも特殊な能力を持っていてな」


「うん。どんな能力?」


「魔力の限界を超えて、魔法を行使出来る」


「それは……魔力切れになった後も、魔法が使えるって事か?」


「そうだ」


 それは凄いな!

 魔力と言うのは、人族やエルフが体内に持つ魔法の元となるエネルギーだ。

 人族の場合は、個人差があって、まったく魔力がない人もいれば、魔力が豊富な人もいる。


 つまり、魔法使いは魔法を使える回数の上限が魔力量で決まる訳だ。

 魔力の豊富な人は沢山魔法を打てる。


 だが、魔力の豊富な人でも、魔力を使い切れば魔法を放てない。

 魔力切れと言われる状態だ。


 魔力は、体力と同じで使えば消耗するが、休息をとれば自然回復する。

 RPGのMPに近いかもしれない。


 それで、パルルの言う事が本当だとすると――。


「魔力の予備がある感じか?」


「ん~、ちょっと違うな。魔力の代わりに、自分の体内エネルギーとでも言うか……。とにかく、魔力が枯渇してからも、少し魔法が行使できるのだ」


「ふーん……」


「ただし、その代償がある。肉体年齢が後退してしまう」


「肉体年齢が後退? あっ!? それで昨日のパルルは、あんな幼い感じの!」


「そうだ。前の仕事で無理をして魔法を連発してな。それで限界を超えて魔法を行使して、まあ、あのざまだ」


「そうか。すると、今の姿がパルル本来の姿なのか?」


「そうだ」


 納得した。

 昨日、パルルが魔法を三回しか放てないと言った。

 やけに回数が少ないと感じたのだが……なるほどな、そう言う理由があったのか。


 あれ?

 でも、そうすると――。


「何で急に元の姿に戻ったんだ?」


「わからぬか?」


「さっぱり!」


 パルルはステーキをナイフで切ると、フォークで突き刺し口に運んだ。

 肉汁がしたたりパルルの唇を濡らす。


「失ったエネルギーは、他者からエネルギーを得る事で補える」


 俺は思わず額に手を当てた。


「待てよ! それってつまり……」


「昨夜は五回も可愛がってくれたからな……。お陰で全快したよ……」


 パルルが、下唇をペロリとなめて肉汁を舌でぬぐった。

 俺は昨夜の行為を思い出し、下腹部が熱くなるのを感じた。


 しばらく、二人で黙々と食事を口に運んだ。

 食後の紅茶を飲み、そっぽを向きながら、俺はパルルに告げた。


「良かったよ。最高だった」


「ふうん……。ああ言う幼い体が好みなのか?」


 パルルの瞳が濡れて見えた。

 俺は立ち上がり、パルルの背後に回り、後ろからパルルを抱きしめた。

 そして、パルルの柔らかく大きな胸を乱暴に鷲掴みにした。


「あっ……」


「今の体も好みだ」


 そのまま唇を合わせる。

 俺たちはもつれるようにベッドに倒れ込み、六回目と七回目を済ませた。

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