暴力的ユーモアによる鋼鉄製アンチテーゼ、それを物語として成立させる筆力

《転生者》とは、個体の持つ性能により「バンディット」や「ナイト」、「クレリック」、そして並外れて強力な「ブレイヴ」等と名付けられた――甲殻や節足を具えた怪物、侵略的外来種。《人類》の敵です。
 対する《人類》は地下都市をダンジョン化し、手術による《魔獣化》措置で力を得た傭兵や、戦闘用に飼育した「コボルト」等の生物で対抗します。
 主人公は「ワーウルフ」と呼ばれる種類の《魔獣化》措置を受けた一傭兵でしたが、後に「魔王」と呼ばれ、《転生者》との戦いの中心になってゆきます。

 と纏めてみると、この起点がいわゆる「魔王と勇者の視点・善悪を入れ替えた逆張り設定の物語」だと見えやすいのですが、逆に上述の内容だけでも見える通り、明らかに、それだけの話ではありません。突き詰めて、設定を練り尽くすことで、そんな起点は読者の頭から消え去ります。
 ミリタリー色の強いアクションホラー、「人類と異形の怪物の種族戦争の戦記」。そういう物になるのです。

 容易に先が予想できない展開、息の詰まる戦闘、癖の強い登場人物。
 安定して面白い一作です。

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