第15話
「改めて、説明をさせていただきます」
応接間のような場所で、ブロムストランド公爵家とベレスフォード公爵家の一同が集まった。説明をしてくれるのはイクセル様のようだ。
「まず、フェリシア嬢へ。御父上の公爵殿とは数年前からやり取りをさせていただいてた。直接お会いするのはこれでまだ三回目だが、手紙で連絡を取り合っていたんだ」
驚くべきことに、数年前から繋がっていた父とイクセル様。独自に情報を入手したイクセル様が王家へスパイを送り込み、そこで不穏な気配を察知し、父へ全て情報を流していたということらしい。
「イクセル殿にはたくさんのことを教えてもらった。フェリシア、お前の状況も全て」
「お父さま……」
「結果的に、王家を捨てることにはなったが、私は悔やんではいない」
父はイクセル様と連絡を取り合い、ランドリア帝国に亡命という形で帝国へ行くことにしたが、そこを現皇太子殿下がベレスフォード公爵家の働きを知っていたからラ帝国の新たな貴族として迎えてくれたということだ。
「お父さまは、あれだけ忠義を尽くした王家を……」
「気にすることはない、逆にあれだけ忠義を尽くしたにもかかわらず、それに見合うだけの誠意を見せてもらえなかったのだ。忠義を尽くす価値など、もうありはしない」
「姉上を傷つけていたクズもクソも、敬うに値しません。姉上はお優しすぎます」
「クライヴ……言葉遣いが悪いわ……」
「今更、取り繕っても仕方がないので」
王家をクズとクソ呼ばわりする弟を窘める母、全く気にしない弟。それを苦笑いで見つめる父。
「フェリシア、私たち家族は、みんなあなたを心配していたのよ。クライヴの言葉を借りると、クズとクソから解放されて本当によかった」
母でさえも弟と同じ言葉を使ったし、その姿を怒ることもしない父に、私は周りが見えていなかったのだということも気づいた。
もっと視野が広ければ、こんなにも回り道をしなくてもよかったかもしれない、なんて。
「久しぶりだね、フェリシア嬢。あなたもご家族の方も無事でよかった」
「は、はい、ありがとうございます。ブロムストランド公爵様」
「はは、そんなに固くならないでくれ。君の頑張りはいろいろなところで評判になっていたよ。君の幸せを願う王侯貴族は多い。私たちも、もちろんそのうちの一つだ」
にこやかに話しかけてくれたブロムストランド公爵夫妻に、緊張しかけた身体が少し緩む。
「まあ、イクセルは自分で幸せにしたいみたいね」
「母上、それは自分で伝えるので黙っていてもらえますか」
「あら、うちの息子はいつからそんな行動が遅い男になったのかしら」
「は、は、う、え?」
「じょ、冗談よ~」
特に、公爵夫人とイクセル様のやり取りでだいぶ気が抜けたのは言うまでもない。イクセル様は夫人にいろいろ揶揄われて、青筋を浮かべて、でも笑顔でというなんとも言い難いお顔だ。
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