第9話

日々、忙しく過ごす私の元へ、一通の手紙が届いた。


「あ……」


イクセル・ブロムストランド、と書かれたその封筒に、自然と笑みがこぼれる。最近は王太子の行動の尻拭いに駆り出されて、さらに王妃からは嫌味をぶつけられて、と大変だった。心に重くのしかかる、言葉たち。それらを発散する場所がなくて、ただ受け止めるしかない。


『無理をしてはいないだろうか、あなたとまた会える日を楽しみにしている』


そう締めくくられたお手紙に、こちらの状況が伝わっているのか、と一瞬だけヒヤリとしてしまう。調べようと思えば、きっと、彼ほど権力のある人物なら簡単に知ることができるだろう。それほどまでに、私と王家の関係性は壊れてしまっている。


「きっと……もうすぐ……」


なんとなく、予想はできていた。きっと今世も失敗したということは。十六歳で死ぬ運命を今世も変えられなかったし、家族が死ぬ運命も変えられなかった。


「なんでっ」


なんで、変えられないの。


ただ一言、それだけが、頭を支配する。何度も何度も、やり直してきたのに、考えられる要因は一つひとつ潰してきたはずなのに。


「どうして……」


なぜ、どうして、そう言ったって意味はないのに。私が失敗してしまったことに変わりはない、どれほど後悔しても。


「姉上、今よろしいでしょうか」


「クライヴ……どうぞ」


「失礼します、姉上」


ここ数年でずいぶんと成長し、大人びたクライヴはすでに私の身長などとうの昔に抜いてしまっている。声変わりもして低くなった声、可愛らしい顔立ちは男らしい顔へと変化した。


「どうかしたの、クライヴ」


「姉上、あのクズとは婚約破棄をしませんか」


「こら、クライヴ。そんな言葉づかいをしないの」


「ですが、姉上。敬うに値しないので」


「そうかもしれないけれど……ここだけの話に収めるのよ」


「もちろんです」


学園へ通うようになって弟は大人びたと同時に口も悪くなった。婚約者である王太子や私を非難する王家をクズ、クソというようになったのだ。さすがにそんなものを本人たちの前で聞かせては大変なことになるので、黙認はするが気を付けるように注意はしている。


「あんなクズと一緒になる必要はありませんし、必要性も感じません。姉上ほどのお人であれば、もっといい人がいるはずです」


「でも、どうしても……今はダメなの」


弟が言うことに一部は賛成ができる。私にもっといい人がいる、という点はわからないけれど、一緒になる必要性を、私も感じていない。栄えようとも滅びようとも、私にはどうでもいいから。


「なぜですか、姉上。何か、言えないことがあるのですか?」


「……そう、いうことじゃ……ないけど……」


「今のままでは、姉上はクソどもに使い潰されて終わりですよ」


クソ呼ばわりと相変わらず、口が悪いクライヴだけれど、私を心配してくれているのはわかっている。それでも、言えなかった。だって、誰が信じられるというのだ、ずっと人生を繰り返しているなんて。


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