第14話

ずっと、泣けなかった。全てを終わらせるまでは、泣いてはいけないと思い、必死で頑張ってきた。


「よく、今まで頑張ったな、フェリシア嬢」


「っひ、く……」


しゃくりあげる私を隣に座っているイクセル様がそっと抱きしめてくれた。


「ご家族の方も、ブロムストランド公爵家で保護している。これからはランドリア帝国の貴族として、生活するそうだ」


やっと、やっとだ。家族が死なない運命にたどり着くことができた。なんとなく、これでループも終わると感じられた。なぜループしていたかはわからないけれど、死なないのであれば、ループは終わる。


「でも、なぜ……私は人生を繰り返していたのでしょうか……」


泣き止み、落ち着いた私は、ふと疑問に思ったことをつぶやいた。ループし続けていた私がわからないのだから答えなんて、ないのに。


「それは、あくまでも想像だが……もしかしたらあなたの願いと意志の強さかもしれないな」


「え?」


「フェリシア嬢の家族を助けたいという願いと、絶対に助けるという意志が、あなたに繰り返させていたのかもしれない。言葉には力が宿るというからな」


言われてみれば、一度目の人生で次はこんなことをしないと、誓った。そしてそれ以降ループを繰り返すたびに、次こそは必ず、と願った。それが原因だったのかもしれない、なんて言われたように思える気がする。


「イクセル様は、すごいです」


「なぜ?」


「私の欲しいと思っているものを、くれるから」


はは、と笑いあっているうちに、ランドリア帝国に到着したらしい。御者の方から声がかかり、馬車の扉が開く。眩しい日差しの中で立っていた家族が見えた。


「フェリシア」


父が、強く抱きしめてくれる。


「姉上」


弟が、駆け寄ってきてくれる。


「フェリシア」


母が、優しく包んでくれる。


これだ、私が欲しかったのは、この未来だ。生きている、殺されることのない、未来。ずっとずっと、これだけを目指していた。


「お父さま……お母さま、クライヴ……」


家族四人、団子状態になってぎゅうぎゅうと互いを抱きしめ合う。その温もりに、落ち着いていたはずの涙がまた零れ落ちた。


「フェリシア、泣かないで」


母の優しい声、父の頭を撫でる大きな手、私よりも大きくなった弟が額を肩に載せてくる。それがどれほど幸福なことか。


希(こいねが)った、私が何度も繰り返した、どうしても変えたかった未来。本当に、変えることができた。ようやく幸せを手に入れることができたのだ。


「イクセル殿、本当に感謝する」


「いいえ、間に合ってよかった」


少し離れた父がイクセル様と話を始める。父とイクセル様がいつ会ったとか、全くわからなくて首をかしげていると、それも含めて詳しい説明をしてくれると、ブロムストランド公爵家のお屋敷へ通してくれた。



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