第13話
ガタガタと、イクセル様に連れられて乗った馬車に揺られ、私は彼から話を聞いていた。
今回の夜会は、実は仕組まれたものだったということ。そして、それを仕組んだのは各国のお客様と国内の一部の貴族であること。
「でも、どうして……」
「あなたの努力を知っている者はみな、あなたを心配していた。いつかあなたが婚約破棄をされることも想像に難くない。そうなった場合、あなたは死ぬまであの王家に使われ続けることになる」
「それは……」
「あなたもわかっていたはずだ。あの王家があなたを利用していたことを」
「……はい」
利用されているとわかっていても、離れることができない理由があった。それはずっと私が叶えられなかった、家族を生かすという願い。それを叶えるためには、王家の反感を買ってはいけない。
「あなたは、何を抱えている」
いきなりの鋭い言葉に、切り返せない。どう説明しても誰も信じられないものだ。どうせ信じてもらえるわけがない。
「わ、たしは……」
「あなたの抱えているものを、少しでも背負わせてはもらえないだろうか」
一人で抱えるのは重すぎる荷、そんなことを言われてしまえば言いたくなってしまうものだ。私一人が覚えている、否、ループし続けては失敗して死んでいく。
何度、苦しい思いをしたことか。
「とても信じられる話ではありません。聞き流してくださって構いません」
「わかった」
何度、死にゆく家族を助けられなかったことか。
「私は、必ず十六歳で死ぬ運命を、繰り返しています」
ぽつりぽつりと、今までことを話した。どれほど繰り返しても運命が変わらないこと、家族もみんな殺されてしまうこと。
「幾度も、家族を目の前で失いました。最期は私に愛していると言って、殺された。私は、そんな家族の死ぬ姿を見せられてから、ゆっくりと殺される。死に方は様々ありましたが、死ぬと必ず八歳の私に戻って、十歳ですべてを思い出します」
まるで夢みたいでしょう、と自嘲する。普通に考えて、信じるか信じないかと言われたら、信じない。夢でも見たのか、と言われておしまいか、頭が狂ったと思われる。
「なるほど、だからあなたの所作はそれだけ洗練されていたのか」
「え……?」
言われたことの意味が分からなかった。なぜ今の話と所作が関係するのか、理解が追い付かない。
「あなたの立ち居振る舞いや外交での姿を見るに、一朝一夕で身に着くようなものではない。幼いころから並外れた努力と厳しい教育を受けても、難しいだろう。それほどまでに、あなたの所作は美しい」
それに、と続けられる言葉は驚きのものだった。
「ブロムストランド公爵家は武人の家系でな、幼いころより武人として鍛えられる。俺も、その一人であるが、未だに師には笑われてばかりだ」
私よりもずっと努力を重ねてきたであろうイクセル様に、そう言ってもらえると嬉しかった。私のしてきたことは間違いではないのだと、肯定してもらえているような気がして。
「それだけ、あなたの磨き続けたものは、すばらしいものだ。そして、あなたが守ろうとしたご家族への愛情、すべてにおいて、あなたが培ってきたものは周囲に伝わっているよ」
「っく、ふ……っあ……」
ポタリ、と涙が零れ落ちた。
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