人生の道に迷ったお巡りさん、あやかしの影を追っていった先で岐路に立つ

人と違う部分があって『普通』の輪からはみ出てしまうと、自分のあるべき姿や居場所を上手く見定められなくなりがちです。
本作の主人公・竜弥くんも、そんな青年でした。
幼い頃からあやかしを見ることができた彼は、警察官という職に就いていますが、どうにもしっくりきていない様子。
ある日、相談を持ちかけてきた付近の住民にあやかしが憑いていたことで、人生を揺るがす事件に巻き込まれていきます。

大人と子供、人間とあやかし。常に何かの境界線上にいる竜弥くんの側には、二人の頼れる大人がいます。
謎の占い美女・彩芽さんと、神出鬼没の伊達男・馳大さん。
何となく不思議な印象の彼らと共に「警察官として」事件を追う先々で、ちらちら見えるあやかしの影。
人間の本性を映すあやかしたちに触れるうち、竜弥くん自身の真なる心が見えてきて……?

心理描写がとにかく丁寧です。
竜弥くんの生い立ちや周囲の人間模様にリアリティがあり、そこへあやかしが入り込んでいるのも彼目線として自然でした。
彩芽さんや馳大さんとの関係が素敵で、この二人は特に魅力的です。
数十年前の日本という時代の舞台も、現代とは違う良い味がありました。

あやかしだろうと人間だろうと、相手とどう関わるのかは、自分自身の在り方次第なのだなと思います。
さまざまな悪意や善意に触れ、竜弥くんがこの先の人生をどう生きるべきか心を定めたラストは、清々しくて前向きな気持ちになりました。
しっかり作り込まれた、あやかしヒューマンドラマ。面白かったです!

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