あなたの作家人生を「終わらせる」名作

この小説は書き手にとって「試練」だ。

まともな小説が書ける人ほど、この小説を読んだが最後、「書くのを辞めたくなる」かもしれない。

それほどまでにこの作品はすごい。

このまま感想を終えると、完全敗北っぽくなって腹立つので、ネタバレにならない程度に当作品の概要と凄さを語ってみる。


「大森靖子」や「神聖かまってちゃん」「相対性理論」等々、この言い方が正しいかは分からないが、いわゆるサブカル系のバンドの曲名が、章の題名にサンプリングされている。(ちなみに大体の曲を私は知ってたし、大体の曲が大好きな曲だった)

 これらは単なる引用ではない。作品の各章の内容に抜群にマッチしている。単に曲のテーマをなぞっているのではなく、曲の持つイメージの広がりと文章が響き合ってる。まさしくアナログシンコペーション。

 各章で視点が次々と入れ替わっていく形式をとっている。そして重要なのが、「誰もまともではない」ということだ。読みながら、私は語り部全員に肩入れしながら、全員を嫌悪するという、ある意味とんでもなくリアルな人間関係を疑似体験することになった。まさしくREALITY MAGIC。

 ほかにも既存の表現に収まらない心理描写、「タイトルだけでどんな話か分かる」今のトレンドとバッチバチの喧嘩を挑む先の読めない展開、複雑なはずなのに読みやすいという読者への配慮!もはやPOSITIVE STRESS!


 ……私のサムいサンプリングはともかく、この小説はどこをどう切り取っても、すさまじい。
 こんなものを高校時代に書き上げたと聞いて呆れかえった。

 おそらくそのうち彼女の名前が書いてある小説が書店にて平積みされる日が来るだろう。その光景を目にするまで、自身の自尊心を保てるぐらいには自分の筆力を高めておきたいと強く誓った。


 グダグダと書いてきたが、言いたいことは一つだけだ。


 間違いなく名作だ。覚悟して読んで欲しい。

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