受賞を断った幻の作者の真相に迫る小説。最後に分かる真実で読者はなぜ、書くのか、なぜ、読むのか、問う。自分がなぜ、書くようになったのか、その原点に戻るようなストーリー展開でした。彼の言葉だった作品を読んでみたい、と思ったのは私だけではなかった気がします。
「新人賞を辞退する」異様な一文である。だが、果たして何が異様なのだろうか。ものを書く人間は誰もが自作が書籍になることを求めているだろう。多くの人に読んでもらうため、あるいは名誉や相応の報酬のため。しかし、それだけだろうか。小説が持っている力はそんなものなのだろうか。そんなわけはない。そうでなければ、これほど多くの人々が小説に向き合うはずがない。本作は、そのことを再認識させてくれました。短編ながら読み応えのある作品です。