ハレルヤ
雨音
ハレルヤ
がらんどうの家
住う人らの心はいずこ
ストーブの熱風が吹き飛ばした
埃と毛玉
取りこぼした心も宙に舞ったか
倒れた彼は
今頃は身体を手離し煙となって
晴天すぎるこの冬空に昇ったか
がらんどうの家
がらんどうの彼女は横たわり
目と呼ばれる孔からは
涙と呼ばれる水が流れて
だらりと落ちた腕の先の手の先の
指の先が求める先は
今じゃどこぞで自由に走りまわる
彼のことだろう
今じゃがらんどうの身体は煙となって
晴天すぎるこの冬空へ昇った
彼のことだろう
わかっているさ
わかっているよ
僕だってそうだ
僕だってそうだよ
がらんどう
がらんどうの家に
がらんどうになったはずの
彼の姿を探すんだ
でもそこにあるのは
がらんどう
がらんどうだけ
でもしょうがないじゃないか
しょうがないよな
僕らはまだ生きていて
彼は先に還っていった
それだけの話なんだ
それほどの話なんだ
それほどの話なんだ
人並みの心を
申し訳程度に持ち合わせた僕だって
こんだけ哀しいんだから
みんなのありふれた心が
がらんどうになってしまったって
しょうがないよな
しょうがないよな
がらんどうの家
当たり前のように昇る陽が
部屋の中に揺らめいて
好きな主人公程とはいかないが
伸びて結んだ髪が揺らめいて
好きなミュージシャンの真似をして
纏った黒い服が揺らめいて
まるで喪に服しているみたいだと
鏡に笑って視界が揺らめいて
顔を洗ってタオルで拭いて
回した洗濯機の泡が揺らめいて
のそのそ生きるフリをしていたら
知った魂が揺らめいて
カシャカシャ爪を鳴らして
歩く気配が揺らめいて
これはきっと幻覚だ
けれどきっと願望だ
どうだっていいかそんなこと
ゆらゆら揺れる姿が見えなかろうが
ゆらゆら揺らめく魂が
ゆらゆら揺らめいているんだから
知ったこっちゃないさがらんどう
好きにさせろよがらんどう
構わず生きるよがらんどう
いつかは埋めるよがらんどう
晴天すぎる冬空の下
ゆらゆら揺らめく洗濯物
なんだかとても気持ちがいいな
ゆらゆら揺らめく魂が
あちこち走りまわっているよ
なんだかとても気持ちがいいな
僕も一緒に走っていいか?
僕も一緒に走っていいだろ?
かつてのあの日々のように
君と一緒に走っていたいんだ
君と一緒に走っていたいんだ
晴天すぎる冬空が
がらんどうを吸い上げて
きらきら光ってゆらめいて
遠いとこまで飛んでった
さよなら、さよなら、さようなら
遠くで鳥が鳴いていた
近くで
かつての
僕はここで泣いていた
僕はここまで泣いてきた
晴天すぎる冬空に
流してきた涙を解き放つ
きらきら光ってゆらめいて
遠いとこまで飛んでゆけ
遠いとこまで飛んでゆけ
さよなら、さよなら、ありがとう
さよなら、さよなら、ありがとう
僕は生きるよこの先も
心で笑い声がする
ハレルヤ 雨音 @ayuction
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