端正な文章で綴られる、小さな英雄たちの冬休み冒険譚

  • ★★★ Excellent!!!

まず読み始めて最初に受けた印象が、「大変読みやすい」ということでした。
余計な装飾が一切なく、それでいて的確に状況を表現される文章をお書きです。
私はプロの作家さんの文章でも、時々読み辛さ……というか、読んでいて胃もたれするような感覚に陥ることがあります。
こちらの作品にはそういうことが一切なく、研ぎ澄まされた文章が静かに、しかししっかりと物語に誘ってくれます。

現代ファンタジーとして、リアルとファンタジーがちょうどよく織り交ぜられていて、現代ファンタジー初心者の私にとって大変勉強になるお話でもあります。

タイトルにもあるように、あらかじめ十日間の出来事であることが分かっているゆえに、「え、この事件十日で片付くの?」と珍しいハラハラ感を覚えつつ読み進めております。
日数的にもおそらくちょうどクライマックスに差し掛かってきた頃で、やはり日を追うごとに面白みが増しているように感じます。
前の日の出来事がきちんと後日の前振りになっているなど、読んでいて「ああ、このお話は出たとこ勝負ではなく、きちんと構成を整えてから書かれているのだな」ということが、随所から感じられるのも一つの魅力でしょうか。

主人公世記の語りが軽妙で微笑ましく、他に登場する人々も皆個性的で、そこに生きているように感じます。
また、作者さんのご気性でしょうか、節々から温かさを感じるのも、このお話をこうして皆さんにお勧めしたい一つの理由です。

世記たちが駆け抜ける濃密な十日間を、ぜひ一緒に追いかけてみませんか?

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