忘れかけの歌を口ずさむように

 第一話と第二話を読んだ。
 個人的には第一話『冬の薔薇は死んだ』が気に入った。以下、そちらに話を絞る。
 生き物はいつか死ぬ。そうはいってもこれは単なる命の終焉とは思えない。
 しんしんと雪が降るさなかの薔薇は、様々な意味合いに解釈もできるし問いかけもできる。
 私は、雪国であろうか冷気のまとわりついた日常のさなかに学生時代から主人公が時折りある同じ行動を繰り返す点に注意を向けた。
 薔薇を持って帰るのは、主人公にとって慣れ親しんだ日常の破壊を暗示したものだったのかもしれない。
 そんな空想を、あの麗しき仇花に捧げたい。