ファンタジーのエッセンスが詰まっている

……と、ファンタジーをほとんど読まない自分でも感じ入ってしまった作品です。酩酊感のある風景描写から、ヒロインであり主人公であるふたりのモノローグまで、堅確かつ情動あふれる筆致で活写されます。なんというか基礎体力が違うというか、完全に横綱相撲……相撲もほとんど見たことないんですが、そんな感じです。

進行度としてはプロローグと1章が終わったところですが、どちらも白眉の出来です。1個ずつ単体で完結できるぐらい、エピソードの立て方が濃密で立体的です。区切りがあまりないようで、どこからでも入って気軽に読み進められる印象です。

ネタバレになってしまいますが、「出会いと別れ」が大きなモチーフとなっている作品です(ひとまず自分はそう読み取りました)。しかも、これからいなくなる人、もういなくなってしまった人との出会いと別れが、そこでは念頭に置かれています。

個人的にはそこに最も惹かれました。作者の方のまなざしの強さを感じます。

その他のおすすめレビュー

忠臣蔵さんの他のおすすめレビュー32