第6話 後日譚
翌朝、シノおばさんは近くの河原で遺体となって見つかった。
裁ちばさみで自ら胸を突き、こと切れていた。
警察が来て屋敷の中を検分する。
マキさんは自分の母に裏お尋ねをやった事を告白し、それで分かったカヨちゃんの所在を伝えた。
「晩に見た事は忘れなさい」
母は憚るように声をひそめて告げた。
それ以上多くの事は話さなかったがマキさんは母の様子から、それ以上カヨちゃんの話はやめようと思った。
後から分かったが、シノおばさんもかつては裏お尋ねを相当行っていたらしい。
夫の病について占っていたが、それから精神に変調をきたすようになったという。
ヤエノは祖母達が裏お尋ねをやるのを陰からいつも覗いていたようだ。
祖母が死んでから、密かに見様見真似で降霊術を繰り返していた。
「裏お尋ねをやるとな、死者の霊だけじゃなく狐狸や魔物の類も一緒に呼んじまうんだ。シノもヤエノも裏お尋ねをやるうちに、どっかで魔にとられちまったんだ」
おじの一人はそう言った。
以上がSさんが祖母マキさんから教えられた話の顛末だ。
この話を私は都内のファミレスでSさんから教えてもらった。
「よかったら、裏お尋ねをやって見せましょうか?」
話が終わった後、Sさんは唐突に言った。
現在まで裏お尋ねは密かに継承されているらしい。
私はSさんの提案を丁重にお断りして席を立った。
会計を済ませて店を出るとSさんはまだ店内の席にいて、窓から私の方をじっと見ている。
しばらく歩いて再び振り返った時も、まだ見続けていた。
私は落ち着かない気持ちになり、足早にその場を立ち去った。
了
裏お尋ね 斉木 京 @fox0407
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