概要
眠れないのかい?なら昔話をしてあげよう。我らが雄々しき、金輪王の話を。
かつてその山には、燃えるような赤い瞳と、赤いたてがみを持つ竜が棲んでいた。
その息吹は森を灼きつくし、その爪は巨人の岩の肌を切り裂き、そのあぎとは角と翼もつ悪魔をも食らう。
その竜のもとに、ある夜、すすり泣く幼い死者の魂がさ迷い、たどりついた。
神にも迫る力を誇る竜は、何をも物ともせず、誰にも屈することはない。
しかし、赤い竜は、自らよりはるかに弱い存在を守るすべを、はかなく散りゆく命をつなぎとめるすべを、何も知らなかった。
その息吹は森を灼きつくし、その爪は巨人の岩の肌を切り裂き、そのあぎとは角と翼もつ悪魔をも食らう。
その竜のもとに、ある夜、すすり泣く幼い死者の魂がさ迷い、たどりついた。
神にも迫る力を誇る竜は、何をも物ともせず、誰にも屈することはない。
しかし、赤い竜は、自らよりはるかに弱い存在を守るすべを、はかなく散りゆく命をつなぎとめるすべを、何も知らなかった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!物語に負けない荘厳な文体と、柔らかなディティールの心地よさ
読み聞かせの形で語られる、とある竜と子供のお話。そして、ひとつの国の成り立ちの物語。
どっぷり濃厚な異世界ファンタジーでした。驚いたのは、おとぎ話・昔話風の体裁でありながら、全然おとぎ話じゃないところです。
書かれているもの自体はおとぎ話のはずなのに、でもそこに自分の見出している〝面白さ〟の種類が、明らかにおとぎ話のそれとは違う。特に中盤以降に顕著だった印象です。
とある山の頂、竜と子供(の幽霊)だけの物語だったものが、やがてひとつの村へと移り、そして国規模の話へ。この空間と時間の連続性。時の流れや土地の広がりを描き出すことで、細部を保ったままに描き出される世界の全体像。
この、物語世界の拓…続きを読む - ★★★ Excellent!!!願いの継承
金輪王(こんりんおう)というのは聞き慣れない言葉ですけど、じつは古代インドの思想にあって、「法(ダルマ)によって世界全ての統治の輪を転がす理想の王さま」という概念上の存在で、金輪っていうのは言っちゃえば釈迦とかゴッドガンダムの背中についてる輪っか状のアレのことを指します。
雑に言えば金輪王というのは超すごい王さまのことで、西洋ファンタジー作品(ですよね?)の本作「金輪王と赤毛の竜」でも、金輪王はだいたいそんな感じの存在として描かれています。
なんでそういう話をしたのかというと、本作における金輪王と竜の神話は、どことなく仏教における「捨身飼虎」の説話を想起させるんですよね。
「捨身飼虎…続きを読む