第11話 奴隷がいる生活

「さぁ学校にいきましょう。ご主人様」


「ねぇ、いい加減そのご主人様って辞めてくれないかな?」


まだ家の中だから言いけど、

これを外で、しかも知らない人に聞かれたりしたら僕は……うん。考えるのは辞めよう。

だから辞めようね橘さん。


「嫌よ。これはれっきとしたわたしたちの関係を表してるんだから!」


「それが嫌だからやめて欲しいんだけど!」


奴隷とご主人様の関係なんて誤解されちゃうよ!

ご主人様なのに、そのご主人様も下僕って意味わからないよね!


「まぁいいわ。えーと、ここかな?ん………しょ…っと。…はい」


橘さんはおもむろにカバンの中から何かを取り出そうと、ガサゴソといじった後、目的のものを探せれたのか、それを持って僕に渡してくる。


「えーと、これはなにかな?」


渡されたのは、革製で出来ている赤くて小さな物。

見たことはある。見たことはあるんだけど。


「?見て分からないの?リードよ?」


「見れば分かるよ!僕が聞きたいのは……って!どうして自分の首に首輪をつけるの!?ちょっとそのリードはなに!?」


「だって普通はこうなんでしょ?奴隷はこうやらないと」


「君のその変な知識はなんなの!?麗加さんもどうにか言ってよ!」


「朝からペットプレイだなんて……負けてられないわ」


「ダメだ!僕じゃどうしようもできない!」


誰か助けて!

僕には麗華さん橘さん2人を相手にするのには荷が重すぎるよ!


「ほらっ、いいから持ちなさいよ……恥ずかしいんだから」


「恥ずかしいなら無理しなくていいよ!」


「そう言って、やらなかったらやらなかったでバイトのこと言いふらす気でしょ!?分かってるんだからね!この鬼畜!悪魔!変態!」


「僕は鬼畜でも悪魔でも変態でもないよ!それに君が勝手にやってることだからね!?」


ダメだ朝からこのツッコミの多さはさすがに疲れちゃうよ。このままこの状況が続くようなら死んじゃうかもしれない。



「おいおい太陽。朝のあれはなんだったんだ?」


1時間目が終わった後の休憩時間。太朗が朝の事について聞いてきた。

そりゃあ聞きたくなっちゃうよね。

ぼくだって逆の立場だったら聞きたくなるもん。

代わってくれないかな太朗。


「えーと、普通に登校しただけだよ?」


まぁでも、とりあえず嘘をついてみよう。


「嘘つけ」


速攻でバレちゃた。


「うっ……」


「どうしたら華麗ちゃんのほかにあんな美少女をはべらせることができんだよっ!」


「えーと、なんと言うか」


「それに何か、手首を拘束してなかったか?」


「き、気のせいじゃないかな?」


朝の登校時、僕は3人で家を出た。

右手は麗華さんと恋人つなぎ。そして、左手はリードを持って。

いや、違うんだよ。説明をさせて欲しい。

橘さんがどうしてもと言うから持っただけであって、決して僕の性癖が原因じゃないから。

バイトのことは言いふらす気がないのに、何なんだろうねあの人は。


僕も譲歩して貰いたくて、首ではなく手首を拘束するようにお願いした。渋々といった幹事でOKを貰ってホットしたんだけど、絵面がどう見てもヤバかった。まぁでも首輪よりはマシだけどね。

マズイな。これをマシだと思ってきた僕は相当麻痺してるぞ。


「まぁいいけどよ。俺にも紹介してくれよな」


「橘さんを?」


「当たり前だろ?あんなに可愛い子普通の男なら放っておかないだろ。若干不良っぽいけど、可愛いから全然OKだ」


「全員OKって、太朗には前園さんが居るでしょ?」


「あぁ?咲月だぁ?誰があんな暴力女…」


「暴力女で悪かったわねー。太朗ー」


「お、おい落ち着け。た、助けてくれ!太陽!」


「ドンマイ」


そして、前園さんと太朗はどこかに消えていってしまった。



昼休み。そう昼休みになった。

いつもなら太朗と一緒に昼ごはんを取るんだけど、僕の憧れていたシチュエーションの一つである女の子と一緒に昼ごはんを食べることになった。


もちろん相手は麗華さんだ。それと一応僕の奴隷になった、いや、なってしまった橘さん。


美少女2人とご飯を食べれるんだから贅沢なんか言えないけど、出来れば僕はこの状況を変わって欲しいと切に願うよ。


キッカケは橘さんからの一本の電話だった。

いつ僕の連絡先を入手したのかは分からないけど、橘さんに校舎から離れてある憩いスペースに来て欲しいと言われたので行くことに。

僕が教室から出る時に麗華さんに行き先を聞かれたので、正直に話したら麗華さんも付いてきたというわけだ。


そして、今現在。


僕の目の前には見る人が見れば喜ぶ、いや、正直に言おう。僕も若干興奮しているところもあるけれど、それよりもなんといか呆れる光景が広がっていた。


橘さんが、自分の身体を使って女体盛りしているなんて想像できるはずないじゃないか……。


「なにをしているのかな?」


「見て分からないの?女体盛りよ?」


「……。それは見て分かるんだけどさ。えーと、寒くない?」


「寒いに決まってるでしょ!」


「じゃあ何でしてるの!」


何故かは知らないけど怒られた。

まだ四月の下旬のこの時期は寒いのに、そんな格好をしている橘さんを心配しただけなのに。


「何でしてるって……奴隷だからに決まってるでしょ?」


「ねぇ!ほんとにその橘さんの変や知識はなんなの!?どうしたら奴隷=女体盛りになったの!?」


麗華さんも相当変な知識を持っていると思ってたけど、橘さんはそれ以上かもしれない!


「だって今は昼休みじゃない?」


「うん。そうだね」


僕にとってもみんなに取っても貴重な昼休み時間だね。


「昼休みってご飯を食べるじゃない?」


「そうだね」


「そこで女体盛りよ」


「なんでそうなったの!」


おかしい!おかし過ぎるよ!

どこをどう間違えたら女体盛りっていう結論にいたるんだ!僕には訳がわからないよ!


「だってご主人様のご飯を用意しなきゃって思って!!」


「そこはなんというか、用意しようとしてくれたことに対しては嬉しいけど、女体盛りはないと思うよ!」


僕は今日だけ人生で一生分の女体盛りって言う言葉を使ってる気がするよ。


「麗華さんもなんとか言ってよ!」


「考えたわね……。女体盛りなら合法的に身体にも……。太陽くん。待ってて!今すぐ私も用意するから!」


「しなくていいよ!」


これ以上カオスな状況にしないで!

もしこの現場を誰かに見られたら僕は死んじゃう!


「あの……ご主人様?早く食べてもらわないと、魚が……」


「いやいやいやいや!食べれるわけないよ!」


「でもそれだと無駄になっちゃう!ご主人様はご飯を粗末にするんですか?!」


「うっ……」


なぜだ……。

なぜ僕は今窮地に立たされているんだ?

どうして僕が悪いみたいになってるんだ?


「太陽くん。食べなさい」


「いやいやいや……!」


「大丈夫よ太陽くん」


「へ?」


「帰ったらこの女より私の女体盛りの方がいいって思うくらいにょたもるから♪」


「にょたもるってなに!?ていうか帰ってから何をするの!?」


逃げようとした僕を麗華さんが捕まえる。

そして、テーブルの上に仰向けでにょたっている橘さんの所まで誘導される。


「いい?太陽くん。魚たちには罪はないの。だからあの女の身体に置かれある魚たちだけでも食べてあげないと」


「それはそうだけど……あれだよね?あの置かれてある刺身を食べちゃったら……その、いろいろマズイよね?」


「それは心配しないで。あの女に一生消えない心の傷が残るだけだから」


「心配するよ!」


「え?太陽くんもしかしてあの女の味方をする気なの?」


「味方も何も僕は彼女の上にのかっている刺身を食べるなんてできないよ。いろいろな意味で」


「いい?太陽くん。貴方は私の下僕なのよ?私がアレを持っている限りは貴方は私の言う事を聞くしかないの」


「今ここでそれを使うだなんて、麗華さんどんだけ橘さんのことが嫌いなの?」


橘さんは麗華さんと友達になりたいって言っているのに、麗華さんは嫌がってる。

なんでそんなに麗華さんは橘さんのことが嫌いなんだろう?


「私の太陽くんを奪われてたまるもんですか……!」


「……ん?」


何かとってもドキッとすることを言われたような……。


「さぁ太陽くん。食べなさい」


とかなんとか考えているうちに、イスにつかされ食べざるをえない状況にされてしまった。


「据え膳を食べざるは男の恥って言うでしょ?」


「タイミングとかいろいろおかしいと思うんだけど」


「ご、ご主人様……どうぞ、召し上がれ…」


若干半泣きになっている橘さんがそう言った。

僕は何も悪いことをしていないのに、何故か今の状況だと一番の悪者は僕になっている。

世の中って不思議だね!

ていうか、どうして自分からそうしているのに泣いてるの!橘さん!


って、そういう場合じゃない。


どうする?

ほんとうにこのまま食べてしまった方がいいのか?

でも食べたら食べたらで人間としての何かを失ってしまう気がする。

けれど、食べなかったら食べなかったで僕は人間として終わってしまう……(脅迫のせいで)。


目に広がるのは、色鮮やかな刺身を白い肌の上に載せている女子高生の姿。

もうこの時点で犯罪を犯しているとしか思えない……。

下半身はしっかりとスカートを履いているけれど、上半身は何も着てなくて生まれたままの姿。

麗華さんまでとは言わないけれど、それなりに育っている二つの膨らみ……って実況している場合じゃない!


どうする?どうするだ!僕!


「あ、箸がないね?」


箸がないことに気づいた僕は、これはチャンスだと思って言う。

箸がないと食べれないとアピールすれば……。


「口で直接で構いませんよ。ご主人様」


「oh………」


なんてこった。退路が塞がれた。


「さぁ食べるのなら早くお願いしますご主人様。見られ続けるのも恥ずかしいので」


「う、うん。そうだよね」


これ以上この状況が続くのがマズイと思った僕は、仕方なく刺身を食べることに。

1枚だけなら大丈夫……。1枚だけなら大丈夫……。


お腹に置いてあるマグロを素手で取り、素早く口に運び入れた。


「昼休みが終わったわね。戻りましょ太陽くん」


「う、うん」


初めての女体盛り刺身は、生暖かい刺身の味がした。こんな経験はもういいかな……。



「疲れた……」


自室に帰ってきた僕はすぐさま寝転んだ。

今日1日の学校は凄く疲れた。

二人共用事があるといって下校は1人だったけど、どうせあの2人のことだから僕の部屋に来るんだろうなと思いつつ僕は夢の世界に落ちた。




ジャラン……ジャラン……という何かと何かがぶつかる音が聞こえてきたので、僕は目覚めた。


「あらおはよう太陽くん。待っててもう少しで夕ご飯できるから」


「おはようございますご主人様。制服のままで寝てしまうとシワになりますよ?脱いでください」


「あ、うん。ありがとう」


やっぱり麗華さんと橘さんは僕の部屋に来ていた。

しれっと夕ご飯を作ってくれているあたり麗華さんは気が利いてくれてほんとうに素晴らしい人だ。

橘さんも僕の着ていた制服をシワにならないように伸ばしてからハンガーにかけてくれているし、気が利いてくれて、とても変な言動をやるような人じゃないと思う。


寝起きだから、あまり大きな声はだしたくないんだけどさ。

でもさやっぱり言わなきゃダメだと僕は思ってきた。


ふー。まずその前に深呼吸をしないと。


そして、言おう。僕がおかしいと思ってる点を言葉のまんま声をだいにして。


「2人とも!!なんて格好してるの!」


「え?」


「え?」


僕が声を大きくしたせいか、二人とも僕の方を一斉に向いた。


僕が目に強いる光景……それは、美少女2人が両手両足に鎖を付けて、the奴隷みたいな格好をしている光景だった。


「だって、私はご主人様の奴隷だし……」


「うん確かに橘さんは分かりたくないけど分かるよ。でも麗華さんは?」


「私だって負けたくないからよ!」


「何に!?」


その後僕は目のやり場に困りながら3人で夕ご飯を食べた。なんだろう。僕の思い描いていた高校生活とはかけ離れる気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は彼女に脅迫されて.......る? ハタケシロ @maedakeiji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ