過去に捉われることの悲しみと喜び

「思い出すことが、すべての悩みのもと。修業とは、過去に捉われない心を持つことである」とは、ある高僧の言葉。

 この物語りの主人公である2人の女性は、40年昔に2人の間に起こったわだかまりの1つ1つを鮮明に記憶し、それらに捉われたまま大人になり、そして再会する。1つ1つのエピソードに、「人間というものは、こんなに幼い時から求めあい傷つけあう生き物なんだなあ」と、その哀れさに嘆息せざるを得ない。

 しかし、過去に捉われるからこそ、書ける物語というものがある。
 そして、読者に与える感動というものがある。

 作者の星都ハナスさんの感性がきらりと光る短編です。

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