龍舌蘭は、約束の花。

 主人公は、小学校の時に絶交した友人の家を、40年ぶりに訪ねた。インターホンを押して、相手が出るのを待つ。その時、主人公は眩暈を起こして、友人と初めて出会った時にタイムスリップする。そこでは幼い自分が、初めて会った友人に、「ブス」と言っていた。ここで主人公は、幼い自分自身に吸い込まれ、友人との思い出を追体験する。
 小学校に上がると、友人は主人公をイジメた。主人公はそれに対して、意地悪で応戦する。しかし自分がイジメられても傷つくが、相手に復讐すればもっと心が落ち着かなくなるのだった。そんな微妙な関係になった二人のことを、ずっと見守ってくれていていたのが、お婆さんだ。お婆さんは戦争体験者だった。そんなお婆さんは、巾着を縫って、仲良しに戻れるという石を入れて、主人公と友人に渡してくれる。
 そして、龍舌蘭の花が咲く。この花はとても珍しく、何十年かに一度しか咲かない上に、すぐに枯れてしまう。主人公と友人は、またこの花が咲くまで友人同士でいようと約束するのだが……。

 昭和という時代背景が、懐かしさを連れてくる。
 その懐かしさの中には、心に刺さった棘を思い出させる。
 後悔と友情。優しさと悲しみ。

 是非、御一読下さい。

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